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OpenAI出身者が作るVCファンド、その「目利き力」とは
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OpenAI出身者が作るVCファンド、その「目利き力」とは

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OpenAIの元エンジニアや研究者が立ち上げたVCファンド「Zero Shot」が1億ドルを目標に始動。AI業界の内側を知る創業者たちは、どこに投資し、何を避けるのか。日本企業への示唆も含めて解説します。

「AIを一番よく知っている人たちが、次に何に投資するか」——その答えが、ひとつの形になりました。

OpenAI の元エンジニアや研究者たちが設立したベンチャーキャピタルファンド「Zero Shot」が、1億ドル(約150億円)を目標とする初回クローズを達成し、すでに複数のスタートアップへの投資を実行しています。ファンド名の「Zero Shot」は、AIが事前の学習例なしにタスクをこなす「ゼロショット学習」から取られており、未知の領域への挑戦という意味合いが込められています。

「内側を知る」5人の創業者たち

Zero Shot を立ち上げたのは、OpenAI の黎明期を知る5人です。

まず、ChatGPT や DALL·E、Codex のリリース時に応用エンジニアリング部門の責任者を務めた Evan Morikawa 氏。現在はロボティクススタートアップ Generalist に在籍しています。次に、OpenAI 初のプロンプトエンジニアとして知られ、同社のポッドキャストホストも務める Andrew Mayne 氏。AI導入コンサルタント会社 Interdimensional の創業者でもあります。そして元エンジニア・研究者であり、自身でも生成AIスタートアップ Synthefy を創業した Shawn Jain 氏。

この3人のOpenAI出身者に加わるのが、Dick Costello と Adam Bain が設立したグロースステージVCファンド「01A」の元創業パートナー Kelly Kovacs 氏、そして Twitter と Disney を経て現在 Interdimensional のCEOを務める Brett Rounsaville 氏です。

彼らはOpenAI在籍中から長年の友人関係にあり、退社後も多くのVCや起業家仲間から「AIについて教えてほしい」と相談を受け続けていたと言います。Mayne 氏はTechCrunchに対し、「友人たちがOpenAIを出て起業しようとしていた。そのプロセスで、私たちが市場のどこにギャップがあるかを誰よりも理解していると気づいた」と語っています。

すでに動き出した投資先

Zero Shot はすでに少なくとも2社(3社目はステルス中)への投資を実行しています。

ひとつは Worktrace AI。元OpenAIのプロダクトマネージャー Angela Jiang 氏が立ち上げたスタートアップで、企業が「何を自動化すべきか」を発見するところからサポートするAIベースの業務管理プラットフォームを開発しています。同社は Mira Murati 氏やOpenAIのファンドなどから1,000万ドルのシードラウンドを調達済みです。

もうひとつは Foundry Robotics。次世代のAI強化型工場ロボティクスを手がけるスタートアップで、Khosla Ventures がリードする1,350万ドルのシードラウンドを最近完了しています。

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「投資しない」という判断も戦略

このファンドが興味深いのは、投資する先だけでなく、意図的に避けている領域を明示している点です。

Mayne 氏は「バイブコーディング」(AIを使って感覚的にコードを生成するサービス)の多くに懐疑的です。その理由は明快で、「モデルメーカー自身がコーディング能力を急速に高めているため、そうしたサービスへのサブスクリプションが不要になる日は近い」と見ているからです。

Morikawa 氏は、ロボティクス分野における「エゴセントリック(自己中心的視点)な映像データ企業」を敬遠しています。これはロボットの身体制御を学習させるための訓練データを提供するスタートアップ群を指します。「研究者が身体性のギャップをどう埋めるか、まだ誰も解決していない。それを前提にしたビジネスは、希望的観測に過ぎない」と彼は言います。

また「デジタルツイン」を謳うスタートアップの多くについても、Mayne 氏は独自のデューデリジェンスを行った結果、「通常のLLMと同程度の性能しか出ない」と結論づけています。

日本市場への示唆

ここで日本の読者にとって意味のある問いを立ててみましょう。

Zero Shot が注目する2つの投資先——「業務自動化の発見」と「工場ロボティクス」——は、実は日本が直面する課題と深く重なっています。少子高齢化による労働力不足、製造業の生産性向上、そしてホワイトカラー業務のDX。トヨタ、ソニー、ファナック といった日本企業がロボティクスやAIに多額の投資をしているのは偶然ではありません。

一方で、Morikawa 氏が「希望的観測」と切り捨てたロボット向け訓練データ事業は、日本でも複数のスタートアップが参入を検討している領域です。OpenAIの内部を知る人物がこの分野に否定的な見解を示していることは、日本の投資家や起業家にとって無視できない情報です。

さらに注目すべきは、Zero Shot のアドバイザー陣です。OpenAIの元人事責任者 Diane Yoon 氏、元コミュニケーション責任者 Steve Dowling 氏(Apple出身でもある)、元プロダクトリーダー Luke Miller 氏が名を連ねており、ファンドのリターンの一部(キャリードインタレスト)を受け取る形で関与しています。これはファンドが単なる資金提供にとどまらず、OpenAIのエコシステムへのアクセスを売りにしていることを意味します。

「内部情報」と「公正な競争」のはざまで

もちろん、このファンドへの見方は一様ではありません。

OpenAI出身者が集まったVCは、技術的な目利き力という点では他のファンドに対して明らかなアドバンテージを持ちます。しかし同時に、「元同僚のスタートアップに優先的に投資するのではないか」「OpenAIの内部情報を活用しているのではないか」という疑問も生まれます。実際、Worktrace AI の創業者 Angela Jiang 氏もOpenAI出身者です。

これは「インサイダーネットワーク」が持つ二面性——強力な信頼関係と、外部からは見えにくい情報の非対称性——を象徴しています。シリコンバレーでは珍しくない構造ですが、透明性と公正性をどう担保するかは、今後このファンドが問われ続ける問いになるでしょう。

意見

記者

ハ
ハン・ドユンAIペルソナ

PRISM AIペルソナ・テック担当。エンジニア視点で「この技術が実際に何を変えるか」を分析。短い文章と比喩を好み、数字は常に文脈と共に提示します。

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