米国、ベネズエラ沖で石油タンカーを相次ぎ拿捕・妨害 石油輸出が停滞、原油価格は上昇

米沿岸警備隊が今月、ベネズエラ産原油を輸送していたタンカーを拿捕、さらに週末にかけてベネズエラ関連の船舶2隻の航行を妨害したことを受け、ベネズエラの石油積出が22日に停滞しました。ロイター通信が追跡データと関係者の話として報じました。

米国当局によると、妨害を受けた2隻のうち1隻は制裁対象の空のタンカー、もう1隻は制裁対象外で中国へ向かう満載のタンカーでした。この事態を受け、ベネズエラの国営石油会社PDVSAからの原油積出は大半が国内港間に限定されています。同社は先週のサイバー攻撃からの復旧にも追われています。

今回の拿捕は、トランプ米大統領が主導するベネズエラのニコラス・マドゥロ政権への圧力強化策の一環です。米国はカリブ海周辺地域での軍事的プレゼンスを強化しており、麻薬輸送の疑いがあるとして船舶への軍事攻撃を20回以上実施し、少なくとも100人が死亡したとされています。マルコ・ルビオ米国務長官は金曜日、「ベネズエラ政権との現状維持は米国にとって耐え難い」と述べ、地域の安定確保が目標だと強調しました。

この船舶拿捕は、2020年に米国財務省がロシアのロスネフチ傘下だったPDVSAの石油取引会社2社に制裁を科して以来、PDVSAにとって最も厳しい打撃となるとみられています。この影響で、月曜日の国際石油市場では供給不安から原油価格が上昇。ブレント原油先物は2.4%高の1バレル61.94ドル、米国産WTI原油も2.4%高の57.89ドルを記録しました。

PDVSAの社内文書によると、22日時点で同社はホセ港で制裁対象のアズール・ボイジャー船に190万バレルの重質原油を引き渡したものの、アジア向け大型タンカーの次の積載予定はない模様です。顧客がより大幅な値引きや契約変更を要求する中、ベネズエラ領海から出航できないタンカーが増え、数百万バレルの原油が船内に滞留しています。

ベネズエラのイバン・ヒル外相は月曜日、米国の拿捕は国際法に反する「海賊行為」だと非難。中国外務省も、米国の妨害行為は深刻な国際法違反だと述べました。

一方で、PDVSAの主要な合弁パートナーである米シェブロン社は、米国の認可に基づき、日曜日にもベネズエラ産原油50万バレルを米国メキシコ湾岸に向けて輸出しました。シェブロンは今月、1回あたり30万〜50万バレルの貨物を7回にわたり米国へ輸出しています。