消えゆく島国ツバルと「世界初の気候移民ビザ」、オーストラリアとの条約がもたらす光と影

もし、自分の故郷が地図から消えてしまうとしたら、あなたならどうしますか？平均海抜がわずか 2メートル という太平洋の小さな島国、ツバル が今、国家存亡の危機に立たされています。地球温暖化による海面上昇が進み、2100年 までに国土の 95% が水没するという予測も出ている中、国民の命を守るための「歴史的な脱出」が始まりました。

「沈みゆく国」に差し伸べられたオーストラリアの手

ツバル 政府は生き残りをかけ、隣国 オーストラリア と「ファレピリ・ユニオン条約」を締結しました。この条約に基づき、毎年最大 280人 のツバル国民がオーストラリアの永住権を取得できるようになります。これは世界初の「気候変動による移住を認めるビザ」として注目を集めています。人口約 1万人 のツバルにとって、この枠組みは国民を安全な場所へと導く重要なライフラインとなります。

支援の裏に隠された地政学的な駆け引き

しかし、この人道支援とも見える条約には、複雑な政治的背景が存在します。南太平洋で影響力を強める 中国 を牽制したいオーストラリアの思惑です。条約には、ツバルが第三国と安全保障上の合意を結ぶ際にオーストラリアと相談することを義務付ける条項が含まれており、事実上、オーストラリアがツバルの外交的決定権の一部を握る形となっています。