核廃棄物の「新しい問題」:次世代原子炉は何を残すのか
世界の電力の10%を支える原子力発電。次世代炉の登場で核廃棄物の管理はどう変わるのか。日本のエネルギー政策にも直結する問いを深掘りする。
地中深く埋めるか、水に沈めるか、それとも鋼鉄で包むか——核廃棄物との「共存」は、人類が数十年かけて編み出した苦肉の策です。しかし今、その前提が静かに揺らぎ始めています。
現在、世界の原子力発電所は毎年1万トンの使用済み核燃料を生み出しながら、世界の電力の10%を供給しています。長年にわたって確立されてきた廃棄物管理の「教科書」は、水冷式・低濃縮ウラン燃料を使う大型炉を前提に書かれたものです。ところが今後数年以内に商業運転を目指す次世代炉の多くは、その教科書に収まりきらない新しい問いを投げかけています。
「教科書」はどう書かれてきたか
核廃棄物は大きく二種類に分けられます。病院や研究施設で使われた防護服などの「低レベル廃棄物」と、より慎重な管理が必要な「高レベル廃棄物」です。体積の大半は低レベル廃棄物ですが、問題の核心は高レベル廃棄物、とりわけ使用済み燃料にあります。
使用済み燃料には、核分裂を持続させるウラン235と、原子が分裂する際に生じる放射性副産物(核分裂生成物)が含まれています。専門家の多くが最善策として挙げるのは「地層処分」——地中深くに掘られた、厳重に管理された穴です。フィンランドは世界で最も進んでおり、南西海岸の処分場が2025年に稼働する見通しです。
一方、米国は1980年代に処分場の候補地を指定しましたが、政治的対立により計画は止まったままです。現在も使用済み燃料は各原子力発電所の敷地内に保管されており、炉から取り出した後はまず「湿式貯蔵」(水中での冷却)、その後「乾式貯蔵」(コンクリートと鋼鉄製の容器への移送)という流れをたどります。
核革新同盟(Nuclear Innovation Alliance)の研究・戦略担当マネージャー、エリック・コスロン氏は「使用済み燃料の管理方法は基本的に変わらない」と述べており、次世代炉が登場しても根本的な枠組みが覆るわけではないと強調します。
「見慣れない廃棄物」が生む新たな課題
とはいえ、新しい設計の炉は「見慣れない廃棄物」を生み出す可能性があります。イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校のサイード・バハウッディン・アラム助教授はこう指摘します。「見慣れない材料は、見慣れない廃棄物を生む」
たとえば、TRISO燃料を使う高温ガス炉があります。TRISOはウランの核を複数の保護層で包み、さらにグラファイト(黒鉛)のシェルに埋め込んだ構造です。このグラファイト部分を使用済み燃料から分離するのはコストと技術の両面で困難なため、グラファイトごと高レベル廃棄物として扱う必要があり、廃棄物の体積が大幅に増えます。
米国の企業X-energyはTRISO燃料を使う高温ガス炉を開発しており、すでに米国原子力規制委員会(NRC)に廃棄物管理計画を提出しています。同社によれば、TRISOの保護シェルのおかげで湿式貯蔵が不要となり、最初から乾式貯蔵が可能になるという利点もあります。
一方、溶融塩炉(液体燃料型)では、燃料と冷却材が分離されておらず、燃料が溶融塩の中に溶け込んでいます。つまり、溶融塩の「桶」全体を高レベル廃棄物として処理しなければならず、廃棄物量は大きく増えます。
逆に、高速炉は燃料をより効率よく燃やすため使用済み燃料の体積は小さくなります。しかしその分、核分裂生成物の濃度が高く、発熱量も大きい。この「熱」こそが地層処分の設計を左右する最大の要因です。元エネルギー省・NRC当局者のポール・ディックマン氏は「地層処分場にどれだけ廃棄物を詰め込めるかを決めるのは、熱なのです」と語ります。
TerraPowerのナトリウム高速炉「Natrium」は2026年3月にNRCから建設許可を取得しました。ナトリウム冷却炉では、冷却材が燃料に混入し被覆管と融合することがあります。ナトリウムは水と激しく反応するため、特殊な処理が必要です。同社は使用済み燃料を湿式貯蔵プールに入れる前に窒素を吹き付けてナトリウムを除去する方法を計画しています。
「どこに置くか」という問題
材料の問題だけでなく、炉の「場所」と「サイズ」も廃棄物管理に影響します。小型モジュール炉(SMR)やマイクロ炉は、大型炉と同様の廃棄物を生み出す可能性がありますが、各地に分散して設置されるため、廃棄物も分散します。米国のように廃棄物を各サイトで保管する国では、小規模サイトが乱立することは現実的ではありません。
一部の企業はマイクロ炉本体ごと製造拠点などの一か所に回収する方式を検討しています。ブリティッシュコロンビア大学のアリソン・マクファーレン教授(元NRC委員長)は「廃棄物の計画を企業に義務付け、自社の廃棄物に責任を持たせるべきだ」と述べています。そして彼女はこう締めくくります。「これらの炉はまだ存在しない。だから廃棄物がどうなるか、細部まで本当にはわかっていない」
日本への接点:「廃炉」と「次世代炉」の間で
日本にとって、この問題は他人事ではありません。東日本大震災以降、国内の原子力政策は大きく揺れ動きました。現在、政府はエネルギー安全保障とカーボンニュートラルの観点から原子力の活用を再び模索しており、次世代炉の開発にも関心を示しています。
三菱重工業や日立製作所は次世代炉の開発に関わっており、国内外の動向を注視しています。しかし日本では、使用済み核燃料の最終処分地がいまだ決まっていません。現行の大型炉ですら未解決のこの問題が、次世代炉の多様な廃棄物形態によってさらに複雑になる可能性があります。
高齢化と人口減少が進む日本社会では、将来世代への負担をどう分配するかという倫理的な問いも切り離せません。廃棄物の管理には数万年単位の時間軸が伴います。「今の私たちが決める」ことの重みは、他のどの国よりも重く感じられるかもしれません。
本コンテンツはAIが原文記事を基に要約・分析したものです。正確性に努めていますが、誤りがある可能性があります。原文の確認をお勧めします。
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