中東の炎が海峡を封鎖するとき
米・イスラエルとイランの衝突が2ヶ月目に突入。フーシ派がバブ・エル・マンデブ海峡を脅かす中、原油価格は100ドルを突破。日本経済への影響と長期化リスクを分析します。
日本が輸入する原油の約9割は、中東の海峡を通じて運ばれてきます。その「道」が、今また揺れています。
2つの海峡、1ヶ月の戦火
米国とイスラエルによるイランへの軍事作戦が始まって、すでに1ヶ月が経過しました。この間、世界の目はホルムズ海峡に集中していましたが、3月28日、新たな火種が加わりました。イエメンのフーシ派がイスラエルに向けてミサイルを発射したのです。イスラエル軍は1発を迎撃したと発表しましたが、これは単なる軍事行動ではありませんでした。
フーシ派が実効支配するのは、バブ・エル・マンデブ海峡の北部沿岸です。この海峡は、紅海からスエズ運河を経由してヨーロッパへ至る、ユーラシア最短の海上ルートの要衝です。すでに原油価格は1バレル100ドルを超えており、この航路がさらに不安定になれば、エネルギー市場への打撃は計り知れません。
北京を拠点とする研究者や香港のアナリストたちは、「長期化の可能性は低い」と見ています。清華大学の国際安全保障戦略センター(CISS)の研究者、Jodie Wen氏は「海峡の封鎖は世界経済に深刻な影響をもたらす」と警告しています。
日本にとって「他人事」では済まない理由
ここで日本の読者に問いかけたいのは、この紛争が「遠い中東の話」で終わるかどうか、という点です。
日本はエネルギー自給率が極めて低く、原油輸入の大部分を中東に依存しています。2022年のロシアによるウクライナ侵攻の際、エネルギー価格の高騰が日本の物価上昇を加速させたことは、記憶に新しいでしょう。今回も同様のシナリオが現実味を帯びています。
トヨタやホンダなどの製造業は、部品調達や物流コストの上昇に直面する可能性があります。また、電力会社が燃料費の増加分を電気料金に転嫁すれば、家庭の負担も増えます。日本銀行が金融政策の正常化を進めるなかで、エネルギー起因のインフレが再燃すれば、その舵取りはさらに難しくなるでしょう。
一方、日本政府は中東各国と比較的良好な外交関係を維持しており、独自の外交チャンネルを持っています。しかし、米国の同盟国として、どこまで独自路線を取れるかには限界があります。
「警告」として放たれたミサイルの意味
フーシ派の情報源は、今回のミサイル攻撃を「警告」と表現しました。軍事的な被害よりも、メッセージとしての意味合いが強いと解釈されています。
これは重要な点です。紛争が「実戦」から「示威行為」の段階にある間は、交渉の余地が残っています。しかし、バブ・エル・マンデブ海峡で商船への攻撃が再開されれば、状況は急変します。フーシ派はすでに2023〜2024年にかけて、同海峡付近での商船攻撃を繰り返した実績があります。国際的な海運会社がアフリカ南端の喜望峰ルートへの迂回を余儀なくされた、あの混乱が再来する可能性があります。
中国のアナリストたちが「長期化は考えにくい」と見る背景には、関係各国の経済的損失への懸念と、外交的解決への圧力があります。しかし、「考えにくい」は「あり得ない」ではありません。
記者
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