iMessageでAIと会話する時代、アプリ疲れの解決策になるか
米Linqが2000万ドル調達。iMessage内でAIアシスタント提供のインフラ構築。アプリ疲れ解消の新たなソリューションとして注目
30万人のユーザーが毎月、iMessageを通じてAIアシスタントと会話している。新しいアプリをダウンロードすることなく、普段使っているメッセージアプリの中で。
米アラバマ州のスタートアップLinqが、この新しい体験を支える技術で2000万ドルのシリーズA資金調達を完了した。同社は企業がiMessage、RCS、SMSを通じて顧客とネイティブにコミュニケーションできるAPIを提供している。
デジタル名刺からメッセージング革命へ
Linqの歩みは決して直線的ではなかった。元Shipt幹部らが設立した同社は、当初デジタル名刺兼リード獲得ツールとして出発。数回のピボットを経て、昨年ついに市場が求める製品を見つけた。
転機となったのは2025年2月のAPI発表だった。企業が顧客に「青いバブル」でメッセージを送れる技術。従来のSMSやビジネス向けメッセージングでは、企業からのメッセージは灰色で表示され、明らかに「ビジネス」だとわかってしまう。しかしLinqの技術では、グループチャット、絵文字、スレッド返信、画像、音声メモなど、iMessageの全機能を活用した自然なコミュニケーションが可能になる。
結果は劇的だった。8か月で、4年間で積み上げた年間経常収益を倍増させた。
AIエージェントブームが新たな転機に
真の転機は、AIアシスタントPokeとの出会いだった。カリフォニアのInteraction Companyが開発したこのAIは、iMessage内でタスク処理、質問応答、スケジュール管理を行える。
「昨年春、彼らが来て言ったんです。『CRMは持っていないが、あなたたちのAPIを使いたい』と」CEO のElliott Potter氏は振り返る。
Pokeは昨年9月のローンチで話題となり、Linqへの問い合わせが殺到した。突然、多数のAI企業がiMessage、RCS、SMS経由でチャットボットやアシスタントを提供したがるようになった。
同社は重要な選択を迫られた。既存のB2B顧客向け事業を継続するか、それともAI市場のインフラレイヤーとして新たな道を歩むか。
アプリ疲れの時代に提案する新しい解決策
Potter氏は消費者の「アプリ疲れ」に注目している。新しいアプリをダウンロードする代わりに、既存のメッセージアプリ内ですべてが完結する世界を描く。
「Pokeなどが証明したのは、AIが十分に優秀になったということです。従来のアプリはもう必要ありません。知的なAIと対話できるインターface、システムとの接続、指示とフィードバック。それだけで十分なのです」
ピボット後の成果は印象的だ。顧客基盤は前四半期比132%拡大、顧客アカウントは平均34%成長した。プラットフォーム経由で月間3000万件以上のメッセージを処理し、ネット売上継続率295%、解約率0%を記録している。
日本市場への示唆
iMessageは米国では主流だが、日本ではLINE、世界的にはWhatsApp、WeChat、Telegramが使われている。Potter氏は「顧客がいる場所ならどこでも対話できるようにする」ことが最終目標だと語る。
日本企業にとって興味深いのは、この技術が既存のコミュニケーションインフラを活用しながら、AIとの新しい接点を創出する点だ。ソニーや任天堂のようなエンターテインメント企業、トヨタのような製造業でも、顧客サポートの新しい形として応用可能性がある。
リスクと課題
一方で、LinqはAppleのプラットフォーム上で事業を展開している現実がある。Metaが第三者によるAIチャットボット提供を禁止したように、Appleが同様の措置を取る可能性は否定できない。
TQ Venturesの共同設立パートナーAndrew Marks氏は「AIと人間のコミュニケーションを友人とのテキストメッセージのように摩擦のないものにすることで、Linqは全く新しいカテゴリーの企業を可能にしている」と評価している。
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