トランプを選んだ男たちが、今なぜ背を向けるのか
コメディアンのアンドリュー・シュルツら「マノスフィア」のインフルエンサーたちがトランプ離れを加速。イラン戦争を機に広がる幻滅は、2026年中間選挙と「トランプ後」の政治地図を塗り替えるかもしれない。
「戦争なんかどうでもいい。俺たちは医療費も払えないんだ」——アンドリュー・シュルツがそう言ったとき、彼はまだトランプ支持者のはずだった。
「反ウォーク」で束ねられた連合が、ほどけ始めた
2024年の大統領選挙でドナルド・トランプが返り咲いた背景には、これまでの共和党支持者とは異なる層の存在があった。イデオロギーよりも「反エスタブリッシュメント」「反ウォーク」を軸に動く若い男性たち——ポッドキャスターのジョー・ローガン、コメディアンのアンドリュー・シュルツ、元Navy SEALのショーン・ライアンといった「マノスフィア(男性圏)」のインフルエンサーたちである。彼らは特定の政党に忠誠を誓うわけではなく、むしろ既成の政治への不信感を共有する、緩やかな連合体だった。
だが今、その連合が音を立てて崩れている。
きっかけはいくつかある。まず2025年に入ってからのエプスタイン・ファイルの非公開継続。次に、ミネソタ州でICEによって米国市民が射殺された事件。そして決定打となったのが、トランプ政権によるイランへの軍事介入だ。シュルツはポッドキャスト「Flagrant」のエピソード694で、こう吐き捨てた。「大学の学費も払えない、家も買えない、健康保険もない。そんな状況で、地図上でどこにあるかも分からない国に何十億ドルも使うのか?」
シュルツだけではない。ジョー・ローガンはトランプのイラン政策を「彼が選挙で訴えたこととまったく逆だ、正気じゃない」と批判。元Navy SEALのショーン・ライアンは、辞職した政府高官ジョー・ケントを称え、トランプ陣営の反戦公約を読み上げながら「これは全部、完全な嘘だった」と断言した。
なぜ「今」なのか——幻滅のタイムライン
この離反は突然起きたわけではない。若者研究プロジェクト「Young Men Research Project」のディレクター、チャーリー・サブジルは「亀裂はずっと前から生じていた」と語る。
支持が揺らいだ経緯を時系列で追うと、その構造が見えてくる。トランプ政権発足直後、シュルツたちは新政権の「力強さ」に興奮していた。移民取締局長官トム・ホーマンの強硬な発言に「これが本物だ!」と喜んでいた。ところが6カ月後、物価は下がらず、財政赤字は拡大し、エプスタイン・ファイルは封印されたまま。シュルツは「戦争を止めると言ったのに資金を出している。支出を減らすと言ったのに増やしている」と嘆いた。
世論調査のデータもこの変化を裏付ける。ピュー・リサーチセンターの最新調査によると、共和党系の無党派層でトランプのイラン政策を支持するのは約半数にとどまる。18〜29歳の若い共和党支持者に至っては、半数以下しか支持していない。独立系有権者のトランプ不支持率は、第一期政権中のいかなる時点よりも高くなっているという調査もある。
政治学者で世論調査の専門家でもあるダン・カッシーノが注目するのは、総合的な支持率よりも「分からない」という回答の急増だ。「その数字が急上昇している」と彼は言う。多くの有権者にとって、トランプはもはや「信頼できる政治家」ではなく、「また別の信用できない政治家」になりつつある。
幻滅の先に何が待つか——中間選挙と「次のトランプ」
この離反が直接的に意味するのは、2026年の中間選挙での共和党の苦戦だ。離反した若い男性や無党派層が民主党に投票するとは限らない。むしろ「棄権」が最も現実的な選択肢になる、とサブジルは指摘する。「家にいる、それが最も起こりやすい結果だ」。
すでにそのシグナルは出ている。民主党は全米の州議会議席を30議席奪還し、候補者の得票率は2024年比で平均約13ポイント上回っている。2018年の「ブルーウェーブ」の再現を期待する声も出始めた。
より長期的な問いは、「トランプ後」のMAGA運動の行方だ。反戦・小政府・反エスタブリッシュメントという旗を、誰が次に掲げるのか。一方には、一貫して反戦を訴えてきたリバタリアン系の下院議員トーマス・マッシーのような存在がある。もう一方には、白人至上主義的な思想を持つインフルエンサーニック・フエンテスのような、より危険な方向性もある。イラン戦争への批判の一部が反ユダヤ主義的な「ユダヤ人がトランプを騙した」という陰謀論に流れていることは、カッシーノも「残念ながらそれが一部の若い男性の間で広まっているナラティブになっている」と認める。
「一つでもやり遂げていたら、俺たちは満足していた」と、シュルツの相方アカーシュ・シンは言った。「戦争をやめる、支出を減らす、エプスタイン・ファイルを公開する——どれか一つでも。」その約束を果たした人物が次の「マノスフィアの寵児」になるかもしれない。
日本から見たとき——「反エスタブリッシュメント」の普遍性
この現象は、アメリカだけの話ではない。特定のイデオロギーを持たず、既成の政治への不満を共有する若い男性たちが、カリスマ的なアウトサイダーに一時的に引きつけられ、やがて幻滅する——この構図は、日本を含む多くの民主主義国家で繰り返されてきたパターンでもある。
日本では、政治への無関心と若年層の投票率の低さが長年の課題だ。だが「無関心」は「満足」ではない。潜在的な不満のエネルギーは、適切なチャンネルを見つけたとき、一気に政治地図を塗り替える力を持つ。アメリカの「マノスフィア」現象は、その可能性を改めて示している。
また、情報の流通という観点からも示唆に富む。シュルツやローガンのポッドキャストは、従来のメディアを迂回して数百万人に直接届く。日本でもひろゆきや各種YouTuberが政治的言論に影響を与えているように、「誰が語るか」よりも「どこで語るか」が変わりつつある時代に、私たちは生きている。
本コンテンツはAIが原文記事を基に要約・分析したものです。正確性に努めていますが、誤りがある可能性があります。原文の確認をお勧めします。
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