トランプ政権が使うAI監視技術、あなたのスマホも対象
ICE(移民税関執行局)が顔認証、携帯電話位置情報、スパイウェアなど最新監視技術を大量導入。一般市民のプライバシーにも影響が及ぶ可能性
350,000人。これは、トランプ大統領の2期目就任から1年間で、ICE(移民税関執行局)が強制送還した人数です。しかし、この数字の背後には、あなたのスマートフォンからも情報を収集する可能性がある、高度な監視技術の存在があります。
携帯電話を「騙す」技術
ICEが使用する最も論議を呼ぶ技術の一つが、セルサイト・シミュレーターです。この装置は携帯電話基地局を装い、周辺のスマートフォンを騙して接続させます。一度接続されると、当局は電話の位置を特定し、通話やメッセージ、インターネット通信を傍受できる可能性があります。
2025年5月、ICEはTechOps Specialty Vehicles社と80万ドル以上の契約を締結。同社は監視装置を搭載した特殊車両を提供します。問題は、この技術が設計上、対象者だけでなく周辺にいる無関係な人々の情報も収集してしまうことです。
過去には、当局がこの技術の使用を裁判所で秘匿し、情報開示を避けるために起訴を取り下げるケースまで発生しています。2019年のボルチモアの事例では、検察官が機器メーカーとの秘密保持契約を破るよりも、事件を取り下げるよう指示されていたことが明らかになりました。
顔認証の拡大利用
Clearview AIは、インターネットから収集した大量の写真データベースを使用し、任意の顔を特定できると謳う企業です。ICEは同社と375万ドルの契約を締結し、児童性的搾取事件や法執行官への暴行事件における被害者と加害者の特定に活用するとしています。
さらに、ICEはMobile Fortifyという顔認証アプリも使用。これは運転免許証の写真を2億枚の写真データベースと照合し、街頭で人物を特定する技術です。データの多くは各州の運転免許証データベースから取得されています。
スパイウェアの復活
2024年9月、ICEはイスラエルのスパイウェア企業Paragon Solutionsと200万ドルの契約を締結しました。バイデン政権は商用スパイウェアの使用を制限する大統領令により、この契約に「作業停止命令」を出していましたが、トランプ政権は先週、この命令を解除しました。
Paragonは「倫理的」なスパイウェア企業を標榜していますが、最近イタリアでジャーナリストや移民活動家への監視スキャンダルに巻き込まれ、同国の情報機関との関係を断つ事態となっています。
位置情報の大量収集
ICEはPenlink社のTanglesとWeblocという監視ツールに500万ドルを支出しています。これらのツールは、数億台のモバイルデバイスから収集された「数十億の日次位置信号」を処理し、過去の携帯電話位置データやソーシャルメディア情報を検索できます。
この位置データは、通常のスマートフォンアプリに組み込まれたSDK(ソフトウェア開発キット)や、リアルタイム入札という広告プロセスを通じて収集されます。企業は令状なしに、このデータを購入することで当局が使用できる状況を作り出しています。
日本への影響
日本企業にとって、この動向は看過できません。ソニーや任天堂などの消費者向けデバイスメーカーは、自社製品が意図せず監視に利用される可能性を考慮する必要があります。また、日本政府も同様の技術導入を検討する可能性があり、プライバシー保護の法整備が急務となるでしょう。
特に注目すべきは、これらの監視技術が移民取締りに留まらず、一般的な法執行活動にも拡大している点です。日本の高齢化社会において、外国人労働者の受け入れが増加する中、同様の監視体制が導入される可能性も否定できません。
関連記事
米国防総省が確認:敵対勢力が商業的位置情報データを使い、戦場の米軍兵士を追跡・監視。広告テクノロジー産業が「国家安全保障上の脅威」として問われ始めた。
ブラウザのサイドチャネル攻撃「FROST」が、SSDのタイミング計測により閲覧履歴やアプリ情報を盗み見る。一般ユーザーから企業まで影響する新手法を解説。
米FTCがCoxメディアなど3社に対し、スマートデバイスで会話を盗聴して広告ターゲティングに使用したと虚偽宣伝した疑いで総額93万ドルの制裁金を科しました。プライバシー広告の実態と日本への示唆を解説します。
ジャーナリストや活動家を標的にした政府系スパイウェア攻撃が急増。Apple、Google、Metaが提供する無料の防御機能を徹底解説。一般ユーザーにも無縁ではない現実を読む。
意見
この記事についてあなたの考えを共有してください
ログインして会話に参加