トランプ氏のグリーンランド発言、80年前の歴史が物語る真実
トランプ氏が「アメリカがグリーンランドをデンマークに返した」と主張。第二次大戦時の複雑な歴史と現代の地政学的意味を探る。
1940年4月、ナチス・ドイツがデンマークを占領した瞬間、遠く離れたグリーンランドは突如として地政学の最前線に立たされることになった。ドナルド・トランプ氏が最近「アメリカがグリーンランドをデンマークに返してやった」と発言したが、この80年以上前の出来事は、果たして彼の主張を裏付けるものなのだろうか。
戦時下の緊急措置
デンマーク本土がドイツ軍に占領されると、グリーンランドは植民地宗主国との連絡を完全に断たれた。アメリカはグリーンランドがドイツの手に渡ることを防ぐため、島に基地を設置し防衛圏を確立した。これは戦時下の緊急措置であり、正式な領土併合ではなかった。
当時のアメリカの行動は、グリーンランドの戦略的重要性を物語っている。北大西洋航路の要衝に位置する同島は、連合軍にとって気象観測基地として、またドイツのUボート対策の拠点として不可欠だった。アメリカはグリーンランドのデンマーク系住民と協力し、実質的な保護統治を行った。
戦後の「返還」の実態
戦争終結後、アメリカは確かにグリーンランドの統治権をデンマークに戻した。しかし、これを「返してやった」と表現するのは適切だろうか。国際法の専門家たちは、アメリカがグリーンランドを正式に併合したことはなく、あくまで戦時下の一時的な保護統治だったと指摘する。
興味深いのは、アメリカが完全に手を引いたわけではないことだ。1951年の防衛協定により、トゥーレ空軍基地(現在のピトゥフィク宇宙基地)の運営権を維持し続けている。この基地は冷戦期を通じて、そして現在も北極圏戦略の要となっている。
現代の地政学的文脈
トランプ氏の発言は、単なる歴史認識の問題を超えて、現代の北極圏をめぐる競争の激化を背景としている。気候変動により北極海の氷が溶け、新たな航路や資源開発の可能性が広がる中、グリーンランドの戦略的価値は80年前以上に高まっている。
中国やロシアが北極圏への影響力拡大を図る中、アメリカにとってグリーンランドは「手放した領土」ではなく、「確保すべき戦略拠点」として映っているのかもしれない。トランプ氏の2019年のグリーンランド購入発言も、こうした文脈で理解できる。
日本にとっても、北極航路の開通はアジアとヨーロッパを結ぶ新たな海上輸送ルートとして重要な意味を持つ。グリーンランド情勢は、遠く離れた島の問題ではなく、日本の通商戦略にも影響を与える可能性がある。
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