ベルギー城での会合が映すEUの危機感
EUエリートがベルギーの城で競争力サミットを開催。2027年まで先送りされた対策は、欧州の経済的地位低下への危機感を浮き彫りに。
2月12日、ベルギーの古城に集まったEUエリートたちの表情は重かった。「競争力サミット」と銘打たれたこの会合で、彼らが直面したのは他の大国がすでに織り込み済みの現実だった。ヨーロッパが負けているという事実である。
これは単なる政策論争でも貿易紛争でもない。21世紀そのものを失いつつあるという認識だった。会合の成果は、現在進行中の経済危機への対応を2027年まで先送りするという約束に留まった。
先送りされた危機感
EUの競争力低下は数字で明確に表れている。世界のGDPに占める欧州の割合は過去20年間で着実に縮小し、技術革新の分野では米国や中国に大きく後れを取っている。特に人工知能、半導体、再生可能エネルギー技術において、欧州企業の存在感は薄れる一方だ。
しかし今回のサミットで打ち出された対策は、具体性に欠けるものばかりだった。「統合された資本市場の創設」「規制の簡素化」「イノベーション投資の拡大」—これらは10年前から繰り返されてきたスローガンと大差ない。
日本の視点から見ると、EUの状況は他人事ではない。日本もまた、急速に変化する国際競争環境の中で、従来の強みを活かしながら新たな成長分野を見つける必要に迫られている。トヨタの電動化戦略やソニーの半導体事業強化は、まさにこうした危機感の表れといえるだろう。
制度疲労と革新のジレンマ
EUが直面する根本的な問題は、27の加盟国による合意形成の困難さにある。各国の利害が複雑に絡み合う中で、迅速な意思決定は極めて困難だ。一方で、米国や中国は国家レベルでの戦略的投資と政策実行が可能である。
興味深いのは、個々の欧州企業の技術力や革新性は決して低くないことだ。ASMLの半導体製造装置、SAPの企業向けソフトウェア、北欧の再生可能エネルギー技術など、世界をリードする分野も存在する。問題は、これらの個別の強みを統合し、スケールアップする仕組みが機能していないことにある。
日本企業にとって、EUの競争力低下は複雑な意味を持つ。一方では市場機会の拡大を意味するが、他方では重要なパートナーの弱体化でもある。特に自動車産業や精密機械分野では、日欧の協力関係が長年にわたって築かれてきた。
アジアから見た欧州の選択
EUの競争力サミットが開催された同じ時期、アジアでは別の動きが活発化していた。ASEAN諸国は中国との経済統合を深める一方で、インドは独自の技術開発路線を歩んでいる。韓国は半導体とバッテリー技術で世界的な地位を確立し、台湾は半導体製造の中核を担い続けている。
こうした中で、EUが選択できる道は限られている。アメリカとの同盟を深めて技術的な依存を強めるか、中国との経済関係を維持しながら独自の道を模索するか。どちらの選択も、短期的には困難を伴う。
日本の高齢化社会が直面する課題—労働力不足、社会保障費の増大、技術革新の必要性—は、EUの多くの国でも共通している。この点で、日欧の協力には大きな可能性が残されているといえるだろう。
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