次のパンデミックに、世界は耐えられるか
WHOの資金危機、ワクチン不信、経済的混乱——ウガンダとDRCのエボラ出血熱とハンタウイルスの同時発生が問う、国際社会のパンデミック対応能力の現実。
次のパンデミックは「もし」ではなく「いつか」の問題だ——WHO事務局長テドロス・アダノム・ゲブレイェスス氏はそう断言する。しかし今、その「いつか」に備えるべき国際的な仕組みは、かつてないほど脆弱な状態にある。
2026年5月18日、WHOはウガンダとコンゴ民主共和国(DRC)でのエボラ出血熱の流行を「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」と宣言した。それと同時に、南米クルーズ船「MV Hondius」に乗船していた20カ国以上の乗客・乗員を巻き込んだハンタウイルスの感染拡大も世界各国で対応を迫られている。二つの異なるウイルスが同時進行する事態は、COVID-19パンデミック以降に問われてきた「国際的な感染症対応体制」の課題を改めて浮き彫りにしている。
WHOの「財布」が空になりつつある
問題の核心は資金にある。WHOは2025年以降、深刻な財政難に直面してきた。そして2026年1月、アメリカが正式にWHOを脱退した。かつてWHO予算の約5分の1を負担していた最大の拠出国の離脱は、組織に大きな穴を開けた。その結果、2026〜27年度の事業予算は62億ドル超に設定されたが、これは前年比9%減という水準だ。
WHOはこれを受けて支出を削減し、感染症サーベイランスや緊急対応プログラムを縮小せざるを得なくなっている。ロンドン衛生熱帯医学大学院・長崎大学の感染症疫学者、カジャ・アッバス准教授はこう指摘する。「WHOへの資金削減は、疾病監視の能力を直接的に弱め、流行への備えと対応力を損なっている。」
WHOが担う役割は単なる「警告」にとどまらない。国際保健規則(IHR)のもと、WHOは各国間の情報共有・連絡調整、専門家の派遣、検査支援、緊急資金の調達を担う。今回のエボラ対応でも、WHOはすでに専門家チームや個人防護具(PPE)、検査支援を現地に送り込んでいる。しかし、こうした対応能力が今後も維持できるかどうかは不透明だ。
条約はあっても、合意はない
資金問題と並行して、国際的な「パンデミック条約」の交渉も難航している。2025年5月、WHO加盟国は「パンデミック協定」を採択した。しかしその核心部分である「病原体アクセスと利益配分(PABS)」の付属文書については、いまだ合意に達していない。
PABSが問うのは、こういう問題だ——あるウイルスを最初に発見・共有した国が、そこから開発されたワクチンや治療薬に公平にアクセスできるか?これは単なる科学的な問いではなく、南北問題、知的財産権、地政学的利害が絡む複雑な交渉だ。テドロス事務局長は「PABSはパズルの最後のピース」と表現し、早期合意を訴えたが、各国の立場は依然として隔たりが大きい。
ダラスを拠点とする感染症専門医、クルティカ・クパリ氏はこう警告する。「病原体サンプル、ゲノム配列データ、疫学情報の迅速な共有は不可欠だ。情報共有をめぐる政治的対立は、封じ込めが最も可能な初期段階での貴重な時間を奪う。」
ワクチン不信という「見えないリスク」
科学的・制度的な問題に加え、社会的な課題も深刻だ。COVID-19パンデミック以降、ワクチンへの不信感は世界各地で根強く残っている。米国では、ロバート・F・ケネディ・ジュニア保健福祉長官が根拠のないワクチン懸念を繰り返し発信しており、専門家はこれが公衆衛生インフラの弱体化につながると懸念する。
実際、米国保健福祉省(HHS)は2025年8月、mRNAワクチン開発に関連する契約・助成金約5億ドルをキャンセルした。影響を受けたのは、H5N1鳥インフルエンザやRSV、COVID-19ブースターなど22件の研究・臨床試験だ。ハーバード大学TH・チャン公衆衛生大学院の分析によれば、これらの削減は科学的進歩を遅らせ、次の感染爆発への備えを損なうリスクがある。
日本社会への接続点
日本にとって、これは「遠い世界の話」ではない。
まず、経済的な波及効果がある。米国とイスラエルによるイランへの軍事行動の影響で、原油・ガス価格が急騰している。英国では市販薬の価格が20〜30%上昇し、インドでは一般的な鎮痛剤が最大96%値上がりしているという報告もある。日本でも医薬品の多くは輸入原料に依存しており、サプライチェーンの混乱は薬価上昇に直結しうる。
次に、日本の高齢化社会という文脈がある。免疫機能が低下しやすい高齢者が多く、医療リソースへの需要が平時でも高い日本では、パンデミック発生時の医療崩壊リスクは他国より大きい。COVID-19で経験したように、医療従事者の不足と病床の逼迫は深刻な問題だった。
さらに、日本はWHOの主要な拠出国の一つであり、米国脱退後の「穴埋め」を求める声が国際社会から高まっている。日本政府がどの程度の追加拠出を行うか、あるいは行わないかは、国際保健外交における日本のプレゼンスにも直結する。
本コンテンツはAIが原文記事を基に要約・分析したものです。正確性に努めていますが、誤りがある可能性があります。原文の確認をお勧めします。
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