キューバ危機再び:燃料不足が露呈する「孤立」の代償
ベネズエラからの石油供給停止でキューバが電力危機に。インターネット制限と経済制裁が生む新たな冷戦構造を分析。
朝5時30分、ハバナ郊外のアロヨ・ナランホ地区。27歳のハビエルと64歳の父エリアスは、暗闇の中を手探りで歩いています。16時間以上続く停電で、シャワーも浴びられず、冷蔵庫の食材は腐敗寸前。軍事演習への参加を義務付けられた予備役として集合場所に向かいましたが、バスは燃料不足で運行されませんでした。
この光景は、ベネズエラのマドゥロ政権がアメリカによって排除された2週間後の1月に起きた出来事です。
ベネズエラ石油に依存していた島国
キューバの電力危機は深刻です。16基の火力発電所のうち6基が稼働停止、そのうち2基は国内最大級の発電施設です。2025年初頭から、国民は日常的に12〜20時間の停電を経験しています。
ベネズエラは長年、キューバの主要石油供給国でした。過去2年間で、キューバの石油需要の50%以上をベネズエラが供給。2025年末時点で、日量約3万バレルの石油がベネズエラからキューバに輸出されていました。
しかし、トランプ政権はこの石油供給の完全停止を宣言。最後にベネズエラから到着した石油船は2025年12月の59万8千バレルで、メキシコ国営石油会社ペメックスからの8万4900バレルと合わせて、これがキューバ政権の当面の生命線となっています。
インターネット vs 食料:究極の選択
キューバ政権が直面するもう一つの課題は、情報統制です。2015年にインターネットサービスが拡大して以来、政権は情報独占を失いました。2021年の民主化デモでは、ソーシャルメディアが重要な役割を果たしました。
現在、国営通信会社ETECSAは料金を大幅に引き上げています。月額360キューバペソ(約1.25ドル)で6ギガバイト、追加3ギガバイトには3360ペソ(約7.55ドル)が必要です。これは年金受給者の月収2075ペソ(約4.65ドル)を上回り、国家公務員の平均月給6506ペソ(約14.60ドル)の半分以上に相当します。
バルセロナに住む記者の母親からのWhatsAppメッセージが現実を物語ります:「息子よ、あなたに連絡したくないわけじゃない。ただ、食費とインターネット代、どちらかしか払えないの」
日本から見た「孤立」の教訓
日本は戦後、エネルギー安全保障の重要性を痛感してきました。1973年の石油危機以降、エネルギー供給源の多様化を進め、現在は中東、ロシア、アメリカなど複数国から調達しています。
キューバの現状は、単一国への過度な依存がもたらすリスクを如実に示しています。日本企業も、ウクライナ情勢を受けてサプライチェーンの見直しを進めていますが、キューバの事例は「代替手段の確保」の重要性を再認識させます。
また、情報統制の手法として「価格による制限」を用いる点は注目に値します。日本でも、災害時の通信インフラの重要性が議論される中、情報アクセスの経済的障壁について考える材料を提供しています。
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