AIメモリ不足が変える世界の勢力図
AI需要でメモリ不足が深刻化。中国企業が台頭し、アップルも戦略変更を余儀なくされる中、日本企業への影響と新たな機会を探る。
2027年のiPhone発売が延期される。世界最大の企業アップルでさえ、今や部品調達に苦戦している。原因は、AI革命が引き起こした史上最悪のメモリ不足だ。
台湾から見えた変化の兆し
台湾の半導体業界関係者の表情が、2025年初頭とは一変している。パワーテック・テクノロジーの蔡董事長は約1年ぶりに公の場に姿を現し、「AI計算はまだ初期段階」と語った。ロボットの動きがまだ緩慢なことを例に挙げ、「真に機敏になるまでには改善の余地が十分ある。つまり、コンピューティングパワーはまだ十分に速くない」と説明する。
ウィンボンドの陳社長は、2026年の全生産能力がすでに売り切れ、2027年の大部分も予約済みだと明かす。「今回は顧客の顧客、さらにその顧客まで直接私たちのところに来ている」と、業界の必死なメモリ確保の実態を語った。
中国企業の野心的拡張
供給不足は中国のメモリチップメーカーにとって千載一遇のチャンスとなっている。中国最大のDRAMメーカーCXMTは上海で生産能力を拡張し、NANDフラッシュメモリ大手YMTCは武漢に新工場を建設中だ。これまでで最も積極的な拡張計画だ。
注目すべきは、HP、デル、エイスース、エイサーといった世界トップクラスのPCメーカーが、初めてCXMTからのDRAM調達を検討していることだ。メモリ価格の高騰が続けば、中国企業が今年中にグローバル技術サプライチェーンに本格参入する可能性がある。
エヌビディアの待機状態
ドナルド・トランプ大統領が中国向け輸出を承認してから約2か月が経つが、エヌビディアのH200 AIチップの中国向け販売は依然として最終承認を待っている。米国政府が中国顧客にライセンスを付与する前に国家安全保障審査を実施しているためだ。
ジェンセン・ファンCEOが仲介した画期的な合意により、年間500億ドル規模の市場への復帰に期待が高まったが、実施は行き詰まっている。一部のサプライヤーは、ワシントンと北京が承認に時間をかけている間、主要なH200コンポーネントの生産を一時停止した。
アップルの戦略転換
世界最大の影響力と購買力を持つアップルでさえ、この供給混乱の影響を受けている。同社は2026年後半の主力発売で、史上初の折りたたみスクリーンモデルと高級カメラ・スクリーンを搭載した2機種の3つのプレミアムiPhoneの生産と出荷を優先することを決定した。
通常9月に発売される標準iPhoneモデルの発売は2027年前半に延期される予定だ。これは、マーケティング戦略の変更と世界的なメモリチップ不足の両方が原因だという。
日本企業への波及効果
ソニーは半導体需要とIP利益により通期利益見通しを上方修正し、任天堂は高いチップコストにもかかわらず利益予測を維持している。日本の半導体関連企業にとって、この需給逼迫は収益機会である一方、調達コストの上昇という課題も抱えている。
特に注目すべきはTSMCの日本第2工場でのAI向け先端チップ製造計画だ。日本のラピダスもIBMの参加を目指し、民間投資10億ドルを突破した。日本の半導体復活戦略が、このAIブームと重なる絶妙なタイミングとなっている。
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