ブルーオリジン、衛星を失う――再利用成功の影で
ジェフ・ベゾスのロケット企業ブルーオリジンは、ニューグレンの第1段回収に成功した一方、顧客の通信衛星を誤った軌道に投入し喪失。NASA月面計画への影響も注目される。
打ち上げから約2時間後、ジェフ・ベゾスはSNSに誇らしげな動画を投稿した。海上のドローン船に着地するロケットブースターの映像だ。しかしその数分後、同じ会社が全く異なるメッセージを発信することになる。
「成功」と「失敗」が同じ朝に起きた
2026年4月20日(日本時間)、ブルーオリジンのロケット「ニューグレン」が米フロリダ州ケープカナベラルから打ち上げられました。今回の飛行で特筆すべきは、過去に使用された第1段ブースターを初めて再利用したという点です。打ち上げから約10分後、そのブースターは予定通り海上のドローン船に着地。ベゾス氏はライバルであるイーロン・マスク氏が所有するSNS「X」にその映像を投稿し、マスク氏からも祝福のコメントが届きました。
しかし、喜びは長くは続きませんでした。打ち上げから約2時間後、ブルーオリジンは「ニューグレンの第2段が衛星を計画外の軌道に投入した」と発表。顧客であるASTスペースモバイルの通信衛星「BlueBird 7」は、運用を維持するには低すぎる高度に置かれてしまい、最終的に大気圏に再突入させて燃やすことになりました。衛星の損失は保険で補填される見込みで、ASTスペースモバイルは「次のBlueBird衛星は約1ヶ月で完成する」と述べています。
ここまでの経緯——10年越しのロケットが抱えるプレッシャー
ニューグレンは10年以上の開発期間を経て、2025年1月にようやく初飛行を果たしました。今回は3回目の飛行で、商業ペイロードを運んだのは昨年11月のNASA向け火星探査機に続いて2回目でした。
ブルーオリジンが早期から商業ペイロードを搭載している点は、業界内でも注目されています。競合のスペースXは、大型ロケット「スターシップ」の初期フライトではダミーのペイロードを使い続けており、実際の顧客衛星を乗せるリスクを慎重に避けてきました。ブルーオリジンが異なる戦略を選んだ背景には、投資家や顧客への信頼性アピールという意図があったとみられます。しかし今回の失敗は、その判断が早計だったのかという問いを浮かび上がらせます。
なお、スペースXも無傷ではありません。2015年のファルコン9の19回目の飛行では国際宇宙ステーション向けの貨物船を失い、2016年には打ち上げ前のテスト中に爆発事故を起こし、Meta(当時フェイスブック)のインターネット衛星を失っています。失敗は宇宙開発の「通過儀礼」とも言えますが、その代償は常に大きいのです。
NASA月面計画への波紋
今回の失敗が単なる商業上の問題にとどまらない理由があります。ブルーオリジンは現在、NASAの「アルテミス計画」において月面着陸船の主要プロバイダーの一つとして位置づけられています。トランプ政権はブルーオリジンとスペースXに対し、大統領の2期目が終わる前に月面着陸船を実現するよう強いプレッシャーをかけています。
ブルーオリジンCEOのデイブ・リンプ氏は「NASAが月に戻るために天地をひっくり返してでも取り組む」と発言しており、同社は今年中に無人の月面着陸船を打ち上げる計画も持っています。当初はニューグレンの第3回飛行でその着陸船を打ち上げることも検討されていましたが、最終的に今回のAST SpaceMobile衛星を優先させました。第2段の信頼性に今回の疑問符がついた状態で、月面着陸船の打ち上げスケジュールはどうなるのか——業界関係者の視線が集まっています。
各ステークホルダーの視点
ASTスペースモバイルにとっては、保険対応と後続衛星の存在から短期的なダメージは限定的です。しかし同社は2026年末までに45機の衛星追加打ち上げを計画しており、信頼できる打ち上げパートナーの確保は死活問題です。ブルーオリジン以外の打ち上げ業者との契約も持っており、リスク分散の重要性が改めて示されました。
NASAにとっては、月面計画の遅延リスクが高まる可能性があります。スペースXへの依存度がさらに高まるとすれば、競争原理が働きにくくなるという懸念もあります。
日本の宇宙産業への示唆として見ると、JAXAや三菱重工が推進するH3ロケットも2023年の初号機失敗から立て直しを図ってきた経緯があります。再利用型ロケットの開発競争において、信頼性の蓄積がいかに難しいかを、今回のブルーオリジンの事例は改めて示しています。日本の商業宇宙スタートアップ(ispaceなど)にとっても、打ち上げパートナー選定の難しさは他人事ではありません。
本コンテンツはAIが原文記事を基に要約・分析したものです。正確性に努めていますが、誤りがある可能性があります。原文の確認をお勧めします。
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