スペイン語だけで歌った史上初のスーパーボウル、バッド・バニーが問いかけた「アメリカとは何か」
プエルトリコ出身のバッド・バニーがスーパーボウルで史上初のスペイン語のみハーフタイムショーを披露。賛否両論の中で見えてきた現代アメリカの多様性と分裂の現実とは。
1億人が視聴するアメリカ最大のスポーツイベントで、史上初めてスペイン語のみで歌われたハーフタイムショー。プエルトリコ出身のバッド・バニーが2月9日に披露したパフォーマンスは、現代アメリカが直面する根深い問いを浮き彫りにした。
史上初の挑戦が生んだ賛否両論
バッド・バニー(本名:ベニート・アントニオ・マルティネス・オカシオ)は、サトウキビ畑や伝統的な屋台、結婚式まで再現したステージで「Titi Me Pregunto」と「Yo Perreo Sola」を熱唱。ペドロ・パスカルやジェシカ・アルバ、カーディ・Bといったゲストも登場し、プエルトリコの文化を祝福した。
彼は白いフットボールジャージに「64」と「Ocasio」の文字を入れ、途中でプエルトリコの旗を掲げながら「El Apagon(停電)」を歌唱。この楽曲は、プエルトリコ住民の島からの移住や電力網の不安定さを歌ったもので、政治的なメッセージも込められていた。
最後に彼が投げたフットボールには「Together, we are America(共に、私たちがアメリカだ)」と書かれ、スタジアムの巨大スクリーンには「憎しみより強いものは愛だけ」というメッセージが映し出された。
文化の力と政治の現実
バッド・バニーはSpotifyで4回世界最多再生アーティストに輝き、昨年はグラミー賞で「Debi Tirar Mas Fotos」により、スペイン語作品として史上初の最優秀アルバム賞を受賞した世界的スーパースターだ。
しかし、スペイン語のみでの歌唱という選択は激しい議論を呼んだ。保守派からは「99.9%が英語話者のフットボールファンの前で、なぜスペイン語だけなのか」という批判が噴出。一方で「アメリカは多様性の国」と擁護する声も上がった。
興味深いのは、NFLコミッショナーのロジャー・グッデルが「世界最高のアーティストの一人」として選択を擁護したことだ。NFLは国際的なファン層拡大を目指しており、グローバルスーパースターの起用は戦略的な判断でもあった。
日本から見た多様性の意味
日本では、このような文化的多様性をめぐる議論は比較的穏やかだが、実は似たような課題を抱えている。在日外国人の増加、国際結婚の子どもたち、そして2020年東京オリンピックで見せた多文化共生の理想と現実のギャップ。
バッド・バニーの挑戦は、「国民統合とは何か」「文化的アイデンティティをどう尊重するか」という普遍的な問いを投げかけている。日本企業が海外展開する際にも直面する、ローカル文化への敬意とグローバル戦略のバランスと重なる部分がある。
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