ヨルダンで治療後、ガザに送還された1歳女児が再入院 ── 医療崩壊と人道危機の現実
ガザからヨルダンへ医療搬送された1歳の女児が、治療後に送還され再び入院。イスラエルによる支援物資没収、ヨルダンの送還方針、WHOの警告から、ガザの深刻な人道危機の実態を多角的に報じます。
深刻な栄養失調でガザからヨルダンに医療搬送されていた1歳のパレスチナ人女児、シワル・アシュールちゃんが、治療を終え12月3日にガザへ送還された後、再び現地の病院に入院したことがBBCの取材で明らかになりました。6ヶ月にわたる海外での治療も虚しく、帰郷からわずか3日で体調が悪化。この一件は、停戦後も続くガザの劣悪な衛生環境と医療システムの崩壊という厳しい現実を浮き彫りにしています。
シワルちゃんの祖母、サハル・アシュールさんによると、女児はガザに戻って3日後に「下痢と嘔吐が始まり、日に日に状況が悪化している」とのことです。現在、ガザ中部にあるアル・アクサ殉教者病院で治療を受けていますが、担当のカリル・アル・ダクラン医師はBBCに対し、「胃腸の感染症に苦しんでおり、必要な治療はしているが、依然として状況は悪い」と語りました。シワルちゃんは免疫不全を抱えており、細菌への抵抗力が弱く、栄養吸収も困難なため、特殊な粉ミルクを必要としています。
なぜ帰郷したのか? 各国の立場
シワルちゃんは、BBCが彼女の窮状を報じ、ヨルダン当局に直接働きかけたことで、今年6月に医療搬送が実現しました。しかし、なぜ危険なガザに送還されたのでしょうか。これには、関係各国の複雑な事情が絡んでいます。
ガザの医療システムは、イスラエルとの紛争で多くの病院が甚大な被害を受け、機能不全に陥っています。停戦後、患者数は病院の収容能力の3倍に急増。医薬品や医療物資、発電機用の燃料が深刻に不足しており、世界保健機関(WHO)はガザの人道的ニーズを「驚異的なレベル」と表現しています。
「患者を送還するのは、ガザからより多くの患者を受け入れるためです。一度に全員を治療することはできず、バッチで対応する必要があります」
ヨルダン政府のモマニ報道官は、シワルちゃんを含む45人の子どもが治療完了後にガザへ送還されたと説明。患者を送還する理由として、新たな患者のためのベッドを確保すること、そして「パレスチナ人が彼らの土地から追われることに、いかなる形でも加担したくない」という方針を挙げました。
「安全保障上の配慮」で没収された支援物資
さらに、一家の苦境に追い打ちをかけたのが、帰郷時のイスラエル当局による検問でした。ヨルダンで支援された特殊粉ミルク「ネオケート」12缶のうち9缶と、支援された衣類が没収されたと母親のナジュワさんは証言しています。「『治療用のミルクは許可されている』と言われたにもかかわらず、彼らは『これ以上持ち込むことは禁止されている』と言って取り上げたのです」と彼女は語りました。
この件についてイスラエル政府は、「安全保障上の配慮」から持ち込める荷物に制限があり、その旨はヨルダン当局と帰還する家族に伝えられていたと回答。「承認された範囲を超える荷物の持ち込みは拒否された」と説明しています。
現在、シワルちゃんの家族は再び彼女を医療搬送させるために手続きを進めています。このプロセスはWHOが管理しており、国連が「荒れ地」と呼ぶ場所からの、か細い命を繋ぐための必死の試みが続いています。
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