TSMCとASMLの値段交渉が半導体業界を揺るがす
TSMCがASMLの最新EUV装置「High-NA」の価格に公然と異議を唱えた。この異例の対立は、半導体サプライチェーンの力学をどう変えるのか。日本企業への影響も含めて深く読み解く。
1台3億5000万ドル。これは家でも工場でもなく、1台の機械の値段です。そしてその機械を「非常に、非常に高い」と公の場で批判したのは、世界で最も利益を上げている半導体受託製造企業、TSMCでした。
2026年4月、業界の注目を集めるシンポジウムで、TSMCの幹部はASMLの最新世代EUV露光装置「High-NA EUV」の価格設定に対して異例の公開批判を行いました。半導体業界において、こうした「洗濯物を公の場で干す」行為は極めて珍しいことです。なぜなら、この2社は互いになくてはならない存在だからです。
「カタログは開いている、しかし芸術は売っていない」
最先端の半導体工場(ファブ)を建設するために必要な機器のリストは、実は誰でも入手できます。ASMLのEUVスキャナー、Lam ResearchとApplied Materialsと東京エレクトロンの成膜・エッチング装置、KLAの計測機器、信越化学のシリコンウェーハ——これらのサプライヤーはよく知られており、十分な資金があればアクセス可能です。
しかし、ここに深い逆説が存在します。機器を揃えることは、最先端のチップを量産することとは全く別の話なのです。
TSMCが今日の地位を築いたのは、単に最高の機器を購入したからではありません。数十年にわたる無数の「修正ループ」の積み重ね——歩留まり改善、プロセス最適化、欠陥管理——によって培われた「制度的な芸術」があるからです。この暗黙知は、どんな機器カタログにも載っていません。エンジニアを20人引き抜いても複製できるものでもありません。
この現実は、世界中で相次ぐ「野心的なファブ計画」を冷静に評価する際の重要な基準となります。イーロン・マスクの「テラファブ」構想は250億ドルの初期予算を掲げていますが、チップ製造の実績はゼロです。日本のRapidusは政府と民間から累計約150億ドルの支援を受け、2027年の量産開始を目指していますが、TSMCの同規模ノードでの生産量(月15万枚以上)に対し、目標は月6000枚からのスタートです。中国のSMICはEUV装置なしに7nmクラスのチップ製造を実現しましたが、歩留まりはTSMCの約80%に対して推定20〜40%に留まっています。
お金は機器を買えます。しかし、芸術は買えない——これが半導体製造の冷酷な真実です。
アップルがTSMCにしたことを、TSMCはASMLにしようとしている
ここで興味深い歴史的な類比が浮かび上がります。
かつてAppleは、TSMCにとって「頂点顧客」でした。新しい製造ノードへの移行リスクを一手に引き受けるほどの発注量を持つ、唯一の顧客。Appleはその立場を最大限に活用し、優遇価格と独占的な先行アクセスを獲得し続けました。TSMCは絞られながらも、Appleのコミットメントがプロセスリーダーシップを維持する資金源になるため、受け入れ続けました。
しかし今、TSMCの顧客基盤はNvidia、AMD、そして幅広いAIコンピューティング需要によって大きく広がりました。もはやAppleだけに依存する必要はなく、TSMCは今やAppleに対しても価格と納期を堂々と提示する立場になっています。
そして2026年、TSMCは全く同じ戦略をASMLに対して試みています。「High-NA EUVは高すぎる。現行世代のEUVで少なくとも2029年まで乗り切れる」という宣言は、単なる技術的判断ではなく、交渉カードです。
しかし、ここに皮肉な警告が潜んでいます。ASMLの顧客基盤も、静かに広がっているのです。
2026年初頭、SKハイニックスはHigh-NA EUVを割増料金を払ってでも早期納入を求め、約30台を調達しました。Samsungは1c DRAMに向けてEUV調達を加速しています。Intelは14Aノードに向けてHigh-NAへの完全移行を既にコミットしています。
2026年現在、High-NA EUVの割増価格を拒否している顧客は、世界でただ1社です。それがTSMCです。
日本への視点:Rapidusと東京エレクトロンの行方
この構造的な変化は、日本の半導体産業にとって複雑な意味を持ちます。
Rapidusにとって、TSMC対ASMLの緊張関係は直接的な影響をもたらす可能性があります。もしASMLがTSMCへの依存を減らし始めるなら、新興顧客への技術移転や価格交渉において、より柔軟な姿勢を見せる可能性があります。一方で、TSMCが現行EUVで2029年まで乗り切れると証明すれば、RapidusがHigh-NA EUVを早期導入することで差別化できる窓が開くかもしれません。
東京エレクトロン(TEL)の立場も注目に値します。同社はエッチングや成膜装置において世界トップクラスのサプライヤーであり、TSMC・ASML双方との深い取引関係を持ちます。この2大巨頭の対立が長期化すれば、装置サプライヤー全体の発注計画にも影響が及ぶ可能性があります。
より広い視点では、日本政府が半導体産業の復権を国家戦略として位置づけている中、この「独占対独占」の構造的対立は、日本が目指すべき方向性——特定の巨人への過度な依存を避けた、分散型サプライチェーンの構築——の重要性を改めて示しています。
本コンテンツはAIが原文記事を基に要約・分析したものです。正確性に努めていますが、誤りがある可能性があります。原文の確認をお勧めします。
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