ASEAN、ミャンマー問題で「長期特使」検討へ
フィリピン外相が明かしたASEANの新戦略。毎年交代する現行制度から長期特使への転換で、ミャンマー軍事政権への圧力強化を狙う。アウンサンスーチー氏との面会は拒否される。
5年間。ミャンマー軍事クーデターから経過した時間だ。その間、ASEANは毎年議長国が変わるたびに、ミャンマー特使も交代してきた。しかし、この「一年交代制」がミャンマー問題解決の足かせになっているのではないか――。
フィリピンのマリア・テレサ・ラザロ外相が日経アジアに語った内容は、ASEAN外交の転換点を示唆している。同外相によると、ASEANは現在の輪番制特使に代わり、長期特使の任命を検討しているという。
「丁寧な拒否」が示すもの
ラザロ外相は今回、アウンサンスーチー氏との面会を要請したが、「丁寧に拒否された」と明かした。この表現は外交的な婉曲表現だが、実態は明確だ。ミャンマー軍事政権は、国際的な圧力に対して一歩も譲歩する意思がないということを示している。
クーデター以降、ASEANは「5項目合意」を通じてミャンマーに暴力停止と対話を求めてきた。しかし、軍事政権は合意をほぼ無視し続けている。国連によると、クーデター以降の死者数は4,500人を超え、避難民は260万人に達している。
現行の輪番制では、議長国が変わるたびに特使も交代し、継続性のある圧力をかけることが困難だった。インドネシア、カンボジア、ラオスと議長国が変わる中で、それぞれ異なるアプローチを取ったものの、目立った成果は上がっていない。
日本への波及効果
長期特使制度への移行は、日本にも重要な意味を持つ。日本は1,200億円規模のODAをミャンマーに提供してきた最大の援助国の一つだ。トヨタや住友商事など多くの日本企業もミャンマーに進出している。
しかし、クーデター後、日本政府は新規援助を停止し、企業活動も大幅に縮小された。長期特使による継続的な圧力が功を奏し、ミャンマー情勢が改善すれば、日本の経済協力や企業活動の再開にも道筋がつく可能性がある。
一方で、日本が重視する「自由で開かれたインド太平洋」構想にとって、ミャンマーの民主化は不可欠な要素だ。軍事政権の継続は、中国の影響力拡大を許し、地域バランスを不安定化させるリスクがある。
制度変更の課題
ただし、長期特使制度への移行には課題も多い。まず、10カ国の加盟国すべての合意が必要だ。ASEANの意思決定は全会一致が原則であり、一カ国でも反対すれば実現しない。
特に、ラオスやカンボジアなど、中国との関係が深い国々は、ミャンマーへの強硬姿勢に消極的とされる。また、長期特使に誰を任命するかも重要な論点だ。軍事政権との対話能力と、国際社会からの信頼の両方を兼ね備えた人物を見つけるのは容易ではない。
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