米軍の中東作戦「Operation Epic Fury」が示す新たな地政学的現実
トランプ政権下での米軍のベネズエラ・イラン攻撃は、アジアを含む世界秩序に何を意味するのか。日本にとっての含意を考察。
2026年2月28日、米海軍駆逐艦USS Delbert D. Blackがトマホーク巡航ミサイルを発射した。「Operation Epic Fury」と名付けられたこの軍事作戦で、米国はベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領の拘束とイランのアリー・ハメネイ最高指導者の殺害を実行した。
この出来事は単なる中東情勢の変化ではない。30年間にわたって続いてきた米国の外交政策パターンが、より露骨な形で表面化した瞬間なのだ。
変わらぬ米国の「介入衝動」
トランプ政権の外交政策は前政権からの「断絶」として語られることが多い。確かに同盟軽視、国際規範への軽蔑、価値観外交の放棄など、従来とは異なる特徴を持つ。しかし冷戦終結以降の歴代政権を振り返ると、むしろ継続性の方が目立つ。
共通するのは「国際システムにおける覇権維持」という目標と、そのためなら「ルールを曲げる」意志だ。ジョージ・W・ブッシュ政権の第二次イラク戦争での「有志連合」、クリントン、オバマ、バイデン政権による国連海洋法条約(UNCLOS)の未批准や国際刑事裁判所への不参加。カナダのマーク・カーニー首相が今年1月のダボス会議で指摘したように、米主導の国際秩序は「心地よい虚構」を維持してきた。最強国家(すなわち米国)は「都合の良い時だけ自らを免除」し、国際法は「告発者や被害者の身元によって適用の厳格さが変わる」のだ。
トランプの行動は、これらをより露骨にしただけである。国際法に従うふりすらせず、議会の監視や国連の承認といった制約も少ない。
「政権交代」への不変の衝動
歴代政権のもう一つの共通点は、政権交代への傾向だ。前政権の人道的介入や終わりなき戦争を批判しながらも、結局は同じ状況に陥る。冷戦終結以降、米軍事作戦は様々な理由で正当化されてきた:1990年の第一次湾岸戦争では「ルールベース国際秩序の維持」、1990年代のバルカン・ソマリア介入では「リベラル国際秩序」、2001年のアフガニスタン侵攻では「国家安全保障」、2003年の第二次イラク戦争では「純粋なパワーポリティクス」として。
今回のベネズエラ・イラン作戦の理由はより曖昧だが(両国とも米国に差し迫った実存的脅威を与えていない)、介入への傾向は変わっていない。
アジアへの含意:「今日の中東は明日のアジア」
対照的に、中国やインドといった新興大国は、近隣地域での影響力行使はあっても、基本的には「不介入」を選択する。そのため「臆病」「責任回避」「フリーライダー」と批判されることも多い。
北京の4つのグローバル・イニシアティブ(開発、安全保障、文明、ガバナンス)は、重要なパートナーであるベネズエラやイランを守れない現実の前では空虚に響く。インドの「グローバル・サウスの声」という野望も、グローバル・サウスの複数の国が攻撃を受けている中での沈黙によって信頼性を失っている。
スリランカ沖でのイラン軍艦撃沈事件は象徴的だ。この軍艦はインドとの多国間海軍演習「MILAN」に参加した直後に米軍魚雷によって沈められた。これはニューデリーが自国の近隣地域での米国の攻撃性に対してほぼ無力であることを示している。
日本を含むアジア諸国は、米国が中東の不安定化とウクライナ戦争、さらに西半球を「排他的勢力圏」とする「ドンロー・ドクトリン」で手一杯であることに安堵感を覚えるかもしれない。これらの展開により、歴代政権が苦戦してきた「アジア重視」政策の実現がさらに困難になっているからだ。
しかし、アジアが免疫を持っていると考えるのは誤りだろう。冷戦時代、アジアは米国の最も長期にわたる軍事介入であるベトナム戦争の舞台だった。なぜ今、ワシントンが自制すると期待できるのか?
技術進歩が変える戦争のリスク
技術の進歩により、精密攻撃作戦とドローン攻撃によって米国人を危険にさらすことなく戦争遂行が可能になった。これは戦争をより「低リスクな活動」にしている。平壌は核兵器によって守られていると感じているかもしれないが、トランプ政権はベネズエラとイランでの「成功」に勢いづいている。
北京でさえ安全ではない。中国指導部を排除する確率はほぼゼロに近いが、トランプのリスク選好と政権内の中国タカ派の存在により、その確率はわずかに上昇したと言えるだろう。軍事力のバランスが時間とともに中国有利に変化していく中、米国の視点からは「早めの行動」が合理的に見える。
トランプのグリーンランドへの脅威が示すように、民主的政権や米国の同盟国でさえ免疫はない。
記者
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