CBS『60ミニッツ』放送中止の舞台裏:ベテラン記者が「政治的検閲」と新編集長を痛烈批判
CBSの看板番組『60ミニッツ』でトランプ政権の移民政策に関する特集が放送直前に中止。ベテラン記者が新編集長を「政治的検閲」と非難し、社内で激しい対立が表面化しています。
米大手テレビ局CBSニュースで、内部告発が大きな波紋を呼んでいます。看板番組『60ミニッツ』のベテラン記者、シャリン・アルフォンシ氏が、放送**3時間前**にトランプ政権による移民強制送還の特集が中止されたことに対し、新編集長バリ・ワイス氏による「政治的な判断」であり「企業による検閲だ」と痛烈に批判しました。
ウォール・ストリート・ジャーナルが入手した内部メールによると、問題となった特集は、トランプ政権によって米国からエルサルバドルの悪名高いテロリスト収容所に強制送還されたベネズエラ人男性たちの証言を追ったものでした。アルフォンシ記者は、この決定が編集上の判断ではなく、政治的なものであると非難しています。
「私たちの特集は、CBSの弁護士と基準・慣行部門によって5回も審査され、承認されていました。事実として正確です」とアルフォンシ氏はメールで主張。彼女は、もし政権がインタビューを拒否したことが特集を中止する正当な理由になるのであれば、それは事実上、政府に「報道を停止させる『キルスイッチ』を与える」ことになると警鐘を鳴らしました。
これに対し、ワイス編集長は声明で反論。「私の仕事は、我々が公開するすべてのストーリーが最高のものであることを保証することです」と述べ、「十分な文脈や重要な声が欠けているなど、何らかの理由で準備ができていないストーリーを保留することは、どの報道機関でも日常的に行われています。準備が整い次第、この重要な特集を放送することを楽しみにしています」と説明しました。ニューヨーク・タイムズ紙によると、ワイス氏はトランプ政権の元高官であるスティーブン・ミラー氏へのインタビューを提案したと報じられています。
ワイス氏は、CBSの親会社パラマウント・スカイダンスのオーナーが彼女の独立系ニュースサイト「ザ・フリー・プレス」を買収した後、今年10月に編集長に就任したばかり。彼女の就任は、CBSニュースの抜本的な改革の始まりと見られていました。
アルフォンシ記者は、命の危険を冒して取材に応じてくれた情報源に対する「道徳的・職業的義務」を強調。「今、彼らを見捨てることは、ジャーナリズムの最も基本的な信条である『声なき者に声を与える』ことへの裏切りです」と訴え、メールの最後をこう締めくくりました。「私たちは、50年にわたる『ゴールドスタンダード』としての評判を、たった一週間の政治的な平穏と引き換えにしようとしています。私はこの放送が解体されるのを黙って見ているわけにはいきません」。
**PRISM Insight:** 今回のCBSの騒動は、独立系メディア出身の編集長が伝統的な大手メディアを率いる際に生じるイデオロギーの衝突を象徴しています。ニュースの「客観性」や「バランス」をめぐる思想の違いが、編集権の独立というジャーナリズムの根幹を揺るがし、メディアの公信力そのものを問い直すきっかけとなる可能性があります。
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