歴史的写真 被写体のその後：悲劇の瞬間を生き抜いた5人の生存の記録

絶望の淵に立たされた瞬間、世界中がその悲劇を注視しました。ジャーナリズムの歴史に刻まれた有名な写真の多くは、戦争や飢餓といった過酷な状況を捉えています。しかし、写真が撮られた直後に命を落としたと思われていた被写体たちが、実はその後、驚くべき強さで人生を切り拓いていたことをご存知でしょうか。

歴史的写真 被写体のその後：ナパーム弾から逃れた少女の現在

1973年のピュリッツアー賞を受賞した「戦争の恐怖」、通称「ナパーム弾の少女」は、ベトナム戦争の象徴です。写真の中央で全裸で走る9歳の少女、ファン・ティ・キム・フックさんは、重度の火傷を負いながらも奇跡的に生き延びました。AP通信のカメラマン、ニック・ウト氏が彼女を病院へ運び、治療を受けさせたのです。彼女は後にベトナム政府の宣伝道具として利用されましたが、30歳の時にカナダへ亡命。現在はカナダで暮らし、平和活動家として紛争地の支援を続けています。

ハゲワシと少女、そして14年後の真実

1993年のスーダン飢餓を捉えた「ハゲワシと少女」は、世界に衝撃を与えました。撮影者のケビン・カーター氏は「なぜ助けなかったのか」と批判を浴び、受賞直後の1994年に自ら命を絶ちました。しかし、ニューヨーク・タイムズによれば、写真の子供（実際は少年でした）は国連の援助センターで保護され、生き延びていました。コン・ニョンと名付けられたその少年は、飢餓を乗り越え、カーター氏よりも13年長く生き、2007年に病死したことが判明しています。

名前のなかった「阿富汗の少女」と「移住者の母」

1984年の「ナショナル ジオグラフィック」の表紙を飾った、鋭い瞳の阿富汗の少女も、長い時を経て身元が判明しました。彼女の名はシャーバト・グーラ。撮影から17年が経過した2002年に再会を果たし、現在はイタリアで安全に暮らしています。また、世界恐慌の象徴である「移住者の母」のモデル、フローレンス・オーウェンズ・トンプソンさんも、貧困を生き抜き、10人の子供たちに支えられながら平穏な晩年を過ごしました。