EVの夢から現実へ:米自動車大手、なぜ今ガソリン車・ハイブリッドに回帰するのか?
米自動車業界でEVへの熱狂が冷め、現実主義が台頭。GMやフォードはなぜ数十億ドル規模の投資を縮小し、ガソリン車やハイブリッド車に回帰するのか?その背景にある需要の誤算と政策の影響を解説します。
米国の自動車業界が、電気自動車(EV)に対する熱狂的な期待から一転、「現実主義」の新たなフェーズに突入しました。2020年代初頭の楽観論とは裏腹に、消費者の需要は期待通りに伸びず失速。CNBCの報道によると、ゼネラルモーターズ(GM)やフォードなどのデトロイト大手は、数十億ドル規模の投資の方向転換を余儀なくされ、収益性の高い大型ガソリン車やSUVの生産に再び注力しています。多くの幹部は、これまでのEV推進が消費者ではなく、政策主導であったことを認め始めています。
期待外れの需要と巨額の損失
自動車メーカーは過去5年間で巨額の資本をEV開発に投じてきましたが、その多くが無駄に終わった可能性が指摘されています。GMのメアリー・バーラCEOは、規制環境が「180度」変わるような予測不能な状況が続いていると吐露。同社はEV関連投資の縮小により$16億ドルの影響があったことを公表しており、今後さらなる評価損が見込まれます。一方、フォードは事業再編とEV投資の縮小に関連して、約$195億ドルの特別費用を計上する見通しです。
フォードのジム・ファーリーCEOはCNBCに対し、「我々は市場を評価し、決断を下した。人々が市場が『こうなるだろう』と考えた場所ではなく、顧客がいる場所に向かっている」と語り、市場の実態に合わせた戦略転換を強調しました。
政策に翻弄された市場:補助金終了で販売急落
米国のEV販売台数は、最大$7,500の連邦政府による購入インセンティブが終了する直前の2025年9月にピークを迎え、新車市場の10.3%を占めました。しかし、Cox Automotiveによると、インセンティブ終了後の第4四半期には、この数字は暫定値で5.2%まで急落しました。
GMは2035年までにEV専業になるという公約を撤回し、フォードは大型EVトラックの次世代モデル開発を中止する代わりに、より手頃な小型EVとハイブリッド車に注力する方針です。ステランティスもEVの優先順位を下げています。
「テスラ効果」の誤算
このEVへの過剰な期待の背景には、テスラの成功がありました。しかし、専門家は、消費者が買っていたのは「EV」ではなく「テスラというブランド」だったと指摘します。S&Pグローバル・モビリティのアナリストは、「テスラはEV市場を創造したのではなく、テスラブランドの市場を創造した」と分析。他のメーカーがテスラの成功を模倣しようとしましたが、ブランド力や充電ネットワーク、ソフトウェア中心の製品体験を再現することはできませんでした。
EV一本足打法のリスクが露呈した今、投資家の注目は「パワートレインのモザイク」戦略へとシフトしています。GMやフォードがハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)を再評価していることは、消費者の現実的なニーズとインフラの整備状況を考慮した、よりバランスの取れたアプローチが求められていることを示唆しています。短期的にはHV関連技術を持つ企業が再評価される可能性があります。
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