中国、不動産危機に「国家級」救済基金を投入へ。2-3兆元規模で市場安定化目指す
中国政府が最大3兆元規模の「不動産安定基金」の設立を発表。深刻化する不動産危機に対し、未完成プロジェクトの買収や完成支援を通じて市場の安定化を図ります。市場の反応と専門家の見方を解説。
深刻化する不動産不況に対処するため、中国政府は2025年12月22日、最大3兆元(約63兆円)規模の「不動産安定基金」を設立すると発表しました。この動きは、システム的な金融リスクを回避し、住宅市場への信頼を回復するための最も大胆な一手と見られています。発表を受け、香港市場では不動産関連株が急騰しました。
当局の発表によると、この基金は2026年第1四半期に運用を開始する予定です。資金は、中国人民銀行(中央銀行)による5000億元の再融資枠を元に、国有商業銀行や金融機関などから調達されます。基金の主な目的は以下の3つです。
1. 未完成プロジェクトの買収:資金繰りに行き詰まった恒大集団や碧桂園などのデベロッパーから、建設が中断したプロジェクトを買い取ります。 2. プロジェクト完成の保証(保交楼):買収したプロジェクトやその他重要プロジェクトに資金を供給し、住宅購入者への引き渡しを確実にします。 3. 余剰住宅の買い上げ:市場の売れ残り物件を買い上げ、手頃な価格の公営住宅として活用することで、在庫圧力を緩和します。
このニュースは市場に好感され、香港ハンセン市場の中国本土不動産株指数は8%以上急騰。碧桂園や融創中国などのデベロッパー株も軒並み大幅高となりました。ゴールドマン・サックスのアナリストは「市場の底割れを防ぐための決断力ある一歩」と評価しています。
一方で、格付け会社ムーディーズは慎重な見方を示しています。報告書では「2〜3兆元という規模は、最大1兆ドルと推定される資金不足全体を埋めるには不十分かもしれない」と指摘。また、地方政府レベルでの資金の執行リスクや、救済がモラルハザードを引き起こす可能性についても警鐘を鳴らしています。基金の成否は、今後の具体的な運用にかかっていると言えるでしょう。
今回の基金設立は、単なる資金注入以上の意味を持ちます。これは、政府が不動産セクターの構造改革に本格的に乗り出すというシグナルです。しかし、成功の鍵は、資金配分の透明性と、地方政府の土地売却収入への依存という根本原因に対処できるかにかかっています。危機を乗り越えるための重要な第一歩ですが、これだけが最終的な解決策ではないでしょう。
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