共和党の好機か自滅か？トランプ氏が揺さぶる2026年ミネソタ州知事選

共和党にとって、青い州ミネソタは長年攻略できなかった目標でした。しかし、2026年の州知事選は、その壁を打ち破る絶好の機会かもしれません。ただし、それはドナルド・トランプ前大統領と、彼の熱心な支持者であるマイク・リンデル氏が、そのチャンスを台無しにしなければの話です。党内からは、現職知事の弱点を突く好機と見る楽観論と、トランプ氏の過激な言動が逆効果になるとの懸念が同時に噴出しています。

ウォルズ知事の「アキレス腱」

共和党が楽観視する理由は、民主党の現職ティム・ウォルズ知事が、州の歴史上誰も成し遂げていない3期連続の当選を目指している点にあります。さらに、彼の在任中に監督下の公的プログラムで大規模な詐欺事件が発覚しました。特に、コロナ禍の子供向け栄養支援プログラムから2億5000万ドルがだまし取られた事件は、司法省が「米国史上最大のコロナ関連詐欺」と呼ぶほどで、州の監査ではウォルズ政権の監督不備が指摘されました。こうした脆弱性は、2006年以来、州知事の座から遠ざかっている共和党にとって格好の攻撃材料となっています。

トランプ氏とリンデル氏という「諸刃の剣」

しかし、この好機を脅かすのがトランプ前大統領の存在です。彼はウォルズ知事への攻撃を強める一方で、州内のソマリア系コミュニティ全体を犯罪者扱いするかのような扇動的な言葉を多用しています。一部の共和党戦略家は、このような分断を煽る言説が穏健な有権者の反感を買い、逆効果になることを懸念しています。元ミネソタ共和党副議長のマイケル・ブロードコーブ氏は、「大統領が火炎放射器を持ってきてそのようなレトリックを投げつければ、共和党候補が思慮深い提案をする余地はなくなる」と警鐘を鳴らします。

このリスクをさらに増幅させる可能性が、マイピロー社CEOのマイク・リンデル氏の知事選出馬です。彼は2020年大統領選に関する陰謀論を広めた人物として知られ、トランプ氏も「彼こそミネソタ州知事にふさわしい」と公言しています。ある共和党戦略家は、もしリンデル氏が候補者になれば「我々はおしまいだ」と語っており、選挙の争点がウォルズ知事の実績からトランプ氏への忠誠心へとすり替わることを危惧しています。

党内に広がる亀裂

トランプ氏の介入を巡っては、党内の見解も割れています。共和党下院院内幹事でミネソタ州選出のトム・エマー氏は、「犬を候補者にしてもティム・ウォルズに勝てるはずだ」と述べ、トランプ氏の戦術がウォルズ知事の弱点を浮き彫りにする上で有効だと擁護しています。一方で、穏健な候補者を立てて政策論争に持ち込むべきだという声も根強く、党が誰を候補者に指名するかが選挙の行方を大きく左右することになりそうです。トランプ氏は2016年にミネソタ州で2ポイント弱の差で敗れて以来、同州での勝利に執着していますが、2020年には7ポイント差、2024年には4ポイント差で敗北しており、彼の強い影響力が必ずしも勝利に結びついていない現実があります。