スーダン和平への新ロードマップ、ナイロビで署名されるも「エリート政治」の批判と国際社会の冷ややかな視線
ケニアのナイロビでスーダンの文民勢力が内戦終結を目指す新ロードマップに署名。しかし、国内からは「エリート政治」との批判が上がり、EUなど国際社会も懐疑的な見方を示している。
ナイロビでの新たな動き
2025年12月16日、ケニアの首都ナイロビで、スーダンの内戦終結と民主的移行の回復を目指す新たな政治ロードマップが署名されました。スーダンの主要政党、武装勢力、市民社会組織、そして著名な政治家らが参加したこの「ナイロビ宣言」は、スーダン軍(SAF)と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」という二つの軍事勢力に対抗する、文民主導の「第三の極」を形成することを目的としています。
宣言の背景と主要な署名者この宣言は、9月にクアッド諸国(米国、サウジアラビア、UAE、エジプト)が発表した声明に呼応する形で生まれました。クアッド声明が求めた即時停戦、人道アクセスの確保、文民監視下での治安部隊改革といった要点が、ナイロビ宣言にも盛り込まれています。署名者には、2021年の軍事クーデターまで暫定文民政府を率いたアブダラ・ハムドク前首相や、長年ダルフール地方で活動し、これまでエリート主導の政治的和解を拒否してきた「スーダン解放運動(SLM-AW)」の指導者アブデルワヒド・アル・ヌール氏も名を連ねています。
国内からの厳しい評価:「国民を代表していない」
この宣言は、文民の政治的主体性を取り戻す試みとして提示されていますが、国内の市民社会からはその正当性や代表性を問う声が上がっています。スーダンの研究者であるハミド・カラファラ氏はアルジャジーラに対し、この連合は国民、特に戦争で最も苦しんでいる人々と繋がることができなかった過去の文民組織の焼き直しに過ぎないと指摘しました。
「これは多くの点で、スーダン国民を代表するのに苦労してきた過去のグループの再生産です。彼らがこれまで行ってきたのと同じやり方で政治を行う、非常にエリート的なグループのままです」
宣言では、2019年にバシール前大統領を失脚させる原動力となった草の根の地域組織「抵抗委員会」にも言及されていますが、どの委員会も正式に署名や支持を表明していません。草案は一部のグループと共有されたものの、十分な審議を待たずにプロセスが進められたと報じられており、現場の市民が政治的に利用されているだけではないかとの懸念を強めています。
国際社会の距離感と戦略の矛盾
欧州連合(EU)の高官は匿名を条件に、このナイロビ宣言を統一された文民プロセスの基盤とは見なしていないと明言しました。
「我々が見たいのはただ一つの文民プロセスです。だからこそアフリカ連合(AU)を支援しているのです。それ以外は、このナイロビのものも含め、気晴らし(distraction)に過ぎません」
EUは、複数の文民プラットフォームを増やすのではなく、AU主導の下でスーダン社会から広く受け入れられる単一の信頼できる枠組みに統合することを優先しています。一方で、米アフリカ政策の専門家キャメロン・ハドソン氏は、この宣言が国内の合意形成よりもクアッド諸国の支持を得ることを目的に、その声明を「リバースエンジニアリング」したものではないかと分析しています。同氏は、停戦交渉と軍改革などの政治的改革を時期尚早に結びつけることは、交渉を複雑にするだけだと警告しました。
国際戦略の中心には、解決困難な矛盾が存在します。国際社会はSAFもRSFもスーダンの政治的な未来を持つべきではないと主張していますが、いかなる停戦も彼らの協力なしには実現不可能です。この根本的なジレンマが、スーダンの和平への道を険しいものにしています。
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