韓国与党、尹前大統領の戒厳令事件めぐる「特別法廷」設置法案を提出 野党と司法界は反発

リード

韓国の与党「共に民主党」は22日、尹錫悦（ユン・ソンニョル）前大統領の戒厳令発動未遂事件を審理するための特別法廷設置法案を国会に提出しました。聯合ニュースによると、裁判の遅延と不公平さを理由に法案を推進する与党に対し、野党と司法界は「違憲の恐れがあり、司法の独立を損なう」として強く反発しており、政局の緊張が高まっています。

与党が法案を強行する理由

共に民主党は、既存の裁判所による審理が「遅延しており、公平性に欠ける」と主張しています。今回の法案は、このような司法の現状に対する不信感を背景に、事件を迅速かつ公正に審理する新たな枠組みを設けることを目的としています。

当初の計画では判事の推薦委員会を設ける予定でしたが、提出された法案では、最高裁判所の指針に基づいて設置される機関が特別法廷の判事を選出するとしています。

野党と司法界の強い反発

この動きに対し、最大野党「国民の力」は「不当な法案だ」と非難し、議事進行を妨害する「フィリバスター（無制限討論）」で徹底抗戦する構えを見せています。ただし、国会で多数議席を占める共に民主党は、フィリバスター開始から24時間後に採決によって強制的に終了させることが可能です。

司法界からも懸念の声が上がっています。最高裁判所は先週、この法案への対案として、既存の裁判所内に内乱や外患の罪を専門に扱う部署を設置する方針を発表しました。これは、新たな特別法廷の設置が三権分立を揺るがしかねないという司法の独立性への危機感を反映したものとみられています。

「（特別法廷設置は）違憲の可能性があり、司法の独立を損なう」― 韓国司法界関係者

今後の展望

法案が国会に提出されたことで、与野党の対立は決定的となりました。今後、フィリバスターをめぐる攻防や、法案の合憲性を問う議論が激化することは避けられない見通しです。韓国の司法制度と政治の根幹を揺るがすこの問題は、今後数週間の重要な焦点となるでしょう。