米国、EU元高官ら5名にビザ発給停止―『デジタルサービス法』を巡る対立が外交問題に発展
米国務省がEUの『デジタルサービス法(DSA)』を主導したティエリー・ブルトン元欧州委員ら5名に対しビザ発給を停止。言論の自由を巡る米欧間の亀裂が深まっています。
デジタル空間のルール作りが、現実世界の国境問題に発展しました。米国務省は12月24日、欧州連合(EU)の元欧州委員ティエリー・ブルトン氏を含む5名に対し、ビザの発給を停止すると発表しました。米国のソーシャルメディア企業に不都合な意見を抑圧するよう「強制した」というのがその理由です。
米国の主張:「グローバル検閲複合体」への対抗措置
マルコ・ルビオ国務長官は声明で、「これらの過激な活動家や武器化されたNGOは、外国による検閲の弾圧を推進してきた。いずれのケースも、米国の言論人や米国企業を標的にしている」と述べました。国務省は、ブルトン氏を、ソーシャルメディア企業にコンテンツモデレーションを義務付けるEUの「デジタルサービス法(DSA)」の「黒幕」だと指摘。この法律は、米国の保守派の一部から右派的な意見を検閲しようとするものだと批判されていました。
今回の措置の対象には、英国を拠点とするグローバル偽情報インデックス(GDI)のクレア・メルフォード氏、オンラインの憎悪や偽情報と戦う非営利団体CCDH(デジタルヘイト対策センター)のイムラン・アーメド氏、そしてドイツの団体HateAidのアンナ=レナ・フォン・ホーデンベルク氏とジョセフィン・バロン氏も含まれています。ルビオ長官は「トランプ大統領のアメリカ・ファースト外交政策は、米国の主権侵害を拒否する」と付け加えました。
欧州側の反発:「権威主義的で不法な攻撃」
ビザ発給停止の対象となった人々は、この決定を強く非難しています。ブルトン氏は「魔女狩り」が行われていると示唆し、X(旧Twitter)上で「アメリカの友人たちへ:検閲は君たちが考えているような場所にはない」と投稿しました。同氏は以前、Xのオーナーであるイーロン・マスク氏とEU規則の遵守を巡って対立した経緯があります。
GDIの広報担当者はBBCに対し、「今日のビザ制裁は、言論の自由に対する権威主義的な攻撃であり、政府による言語道断な検閲行為だ」と述べました。HateAidのCEO両名も共同声明で、「法治をますます無視し、批判者を黙らせようとする政府による抑圧行為だ」と批判しています。
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