台湾政治の深い溝：野党が頼清徳総統の弾劾手続きを開始、400億ドルの防衛予算に暗雲
台湾の野党（国民党・民衆党）が頼清徳総統の弾劾手続きを開始しました。可決の可能性は低いものの、400億ドルの防衛予算や2026年度予算案が停滞するなど、政治的空白が深刻化しています。台湾中央研究院の専門家は「歴史的記録を残すための象徴的な抗議」と分析しています。
史上初の3期連続政権を勝ち取った一方で、議会では四面楚歌の状況です。ロイター通信やアルジャジーラなどの報道によると、台湾の野党である国民党（KMT）と民衆党（TPP）は2025年12月26日、頼清徳総統と卓栄泰行政院長に対する弾劾手続きを正式に開始しました。憲法違反と立法プロセスの軽視が理由とされていますが、専門家はこの動きを「台湾民主化史上、初めての総統弾劾」という記録を残すための象徴的な抗議活動であると分析しています。
分断政府が生んだ立法府の麻痺
頼政権が発足した2024年以降、台湾政府は「分断政府（与小野大）」の状態にあります。この政治的対立は実務に深刻な影響を及ぼしており、2026年度予算の審議が停滞しているほか、政府が提出した400億ドル（約6兆円相当）規模の追加防衛予算案も野党の反対により足止めを食らっています。また、地方税の配分を巡る法案に行政院長が拒否権を行使するなど、行政と立法の衝突は激化する一方です。
実際に弾劾を成立させることは不可能です。しかし野党は、頼総統を台湾民主主義の歴史上、初めて弾劾対象となった総統として記録に刻もうとしています。これは行政側が立法府の可決した法案の公布を拒否したことへの報復であり、屈辱を与えるための手段なのです。
弾劾成立の可能性と今後の展望
弾劾案を可決するには、立法府の全議席の3分の2以上の賛成が必要となります。2026年5月19日に予定されている採決に向けて野党は動きを強めていますが、現時点では必要な議席数には届いていません。たとえ議会を通過したとしても、最終的には憲法法廷での判断が必要となり、現行の司法構成では却下される可能性が高いと見られています。しかし、この一連の騒動は支持層の固めには有効であり、次期選挙を見据えた政治的パフォーマンスとしての側面が強いと指摘されています。
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