ASEANの和平努力中に戦闘再燃、タイ・カンボジア国境で緊張激化

和平への期待を打ち砕く砲火

東南アジア諸国連合（ASEAN）の外相らがマレーシアの首都クアラルンプールで緊急会合を開く中、タイとカンボジアの国境地帯で22日早朝、新たな武力衝突が発生しました。この戦闘は、致命的な紛争の解決を目指す外交努力を根底から揺るがす恐れがあります。

通信社らの報道によると、12月8日に戦闘が再開されて以来、死者は少なくとも40人に達し、両国合わせて100万人近くが家を追われ避難民となっています。

非難の応酬：F-16と「有毒ガス」

カンボジア国防省は22日、国営のカンボジア通信社（AKP）を通じて、タイがF-16戦闘機を展開し、バンテイメンチェイ州に4発の爆弾を投下したと非難しました。さらに、プレイチャン村周辺では「有毒ガス」を使用したとも主張しています。

「カンボジア軍は状況を注意深く監視している。侵略者に対し、カンボジアの領土保全を守るという任務への警戒を怠らず、勇敢かつ断固として防衛を続ける」— カンボジア国防省 声明

一方、タイのテレビ局「モーニングニュースTV3」は、22日早朝にサケオ州で「銃撃戦」があったと報道。カンボジア軍が「重火器」を発射し、コークスン地区で火災が発生、家屋が損壊したと伝えています。タイ政府は、この新たな戦闘についてまだ公式なコメントを発表していません。

外交の舞台裏：ASEANの役割

戦闘が続く中、クアラルンプールではASEANの会合が開催され、タイとカンボジアの代表が戦闘再開後初めて直接顔を合わせる予定です。議長国マレーシアのモハマド・ハサン外相は、この会合で緊張緩和と戦闘終結に向けた方策を検討すると述べています。

会合では、米国が提供した衛星監視データや現地での観測結果が提示される見込みです。マレーシアのアンワル・イブラヒム首相は先週、両国首脳が「できるだけ早く友好的な解決策に達することに意欲的だ」と語り、会合への期待感を示していました。

米国務省も21日、「敵対行為を止め、重火器を撤去し、地雷の敷設を中止し、クアラルンプール和平合意を完全に履行する」よう両国に強く要請しています。