ガザの魂が瓦礫に:2000年の歴史を誇る大オマリ・モスク、紛争で破壊される
ガザ地区で約2000年の歴史を持つ大オマリ・モスクが、続く紛争の中で廃墟と化しました。この文化遺産の破壊が意味するものと、紛争下における歴史的建造物保護の課題について解説します。
パレスチナ・ガザ地区で最も古く、象徴的な存在であった大オマリ・モスクが、現在進行中の紛争により深刻な被害を受け、廃墟と化していることが確認されました。アルジャジーラが報じた映像では、かつて壮麗だった建造物の大部分が崩れ落ち、瓦礫の山と化している様子が映し出されています。この破壊は、ガザの物理的な景観だけでなく、人々の精神的・文化的な拠り所を揺るがす深刻な事態です。
大オマリ・モスクの歴史は、この土地の複雑な過去を物語っています。その起源は鉄器時代に遡り、元々はペリシテ人の神殿があった場所とされています。その後、西暦5世紀にはビザンツ帝国によって教会が建てられ、7世紀にイスラム教徒の支配下に入ってから現在のモスクとなりました。約2000年にわたり、異なる宗教と文明の変遷を見守ってきた、まさに「生きた博物館」とも言える場所でした。
今回の破壊により、ガザで最も有名なランドマークの一つであるマムルーク様式のミナレット(尖塔)を含む、歴史的価値の非常に高い部分が失われました。地元住民や歴史家は、この損失は単なる建物の破壊にとどまらず、世代を超えて受け継がれてきた共同体の記憶とアイデンティティに対する攻撃であると嘆いています。
武力紛争の際の文化財の保護に関するハーグ条約では、意図的に文化遺産を標的にすることは戦争犯罪と見なされる可能性があります。ユネスコ(国連教育科学文化機関)をはじめとする国際機関は、紛争当事者に対し、文化財の保護を繰り返し呼びかけています。
現代の紛争において、文化遺産の破壊は単なる付随的損害ではなく、意図的な戦略として用いられることがあります。これは、敵対する共同体の歴史、アイデンティティ、そして未来への希望を根こそぎ奪う「文化浄化」とも呼べる行為です。大オマリ・モスクの破壊は、物理的な戦闘だけでなく、誰がその土地の正当な歴史を所有するのかを巡る「記憶の戦争」が起きていることを示唆しています。
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