5,500枚から選ばれた奇跡の一枚：2020年水中写真家アワード受賞作発表

5,500枚を超える応募作の中から、海の世界の真実を捉えた最高の一枚が決定しました。世界中から500人以上の写真家が参加した「2020年水中写真家アワード（UPY）」の結果が発表され、フランスのプロ写真家グレッグ・ルクール氏が総合優勝に輝きました。

2020年水中写真家アワード：南極の氷の下に広がる生命の営み

総合優勝を果たしたルクール氏の作品「Frozen Mobile Home」は、南極半島の氷山の下で暮らすカニクイアザラシの姿を捉えたものです。マイナス2度という極限の環境下で撮影されたこの写真は、氷山が単なる氷の塊ではなく、多様な海洋生物を支える動的な生態系であることを物語っています。審査委員長のアレクサンダー・マスタード博士は、この作品の構図と希少性を高く評価しました。

多様なカテゴリーが映し出す海の「素顔」

本大会では全14のカテゴリーで競われ、驚くべき瞬間が多く記録されました。行動カテゴリーでは、アメリカのナディア・アリー氏がメキシコ沖で撮影した、1万匹を超えると推定されるモブラ（イトマキエイ）の大群の映像が注目を集めました。また、イタリアのパスクアーレ・バッサロ氏は、海面を漂うサッカーボールに掴まるタコのユーモラスな姿を捉え、海洋ゴミの問題と生物の適応力を同時に示しました。

ポートレートカテゴリーでは、ベルギーのルーマン・リュック氏による「怒ったタツノオトシゴ」が選出されました。水深12メートルの地点で2ヶ月間もの追跡を経て撮影されたこの一枚は、特定のライティング技術を用いることで、普段は穏やかなタツノオトシゴに劇的な表情を与えています。