スイス裁判所、セメント大手ホルシムへの気候変動訴訟を受理 インドネシア住民の訴えを審理へ

画期的な決定

スイスのツーク州裁判所は12月22日、セメント世界大手ホルシムに対する気候変動訴訟を受理するという歴史的な決定を下しました。海面上昇による洪水被害に苦しむインドネシア・パリ島の住民4人が、同社の二酸化炭素（CO2）排出削減努力が不十分だとして訴えていたものです。この決定は、スイス企業が気候変動への貢献に対して法的責任を問われる初のケースとなる可能性があります。

この訴訟は2023年1月、ホルシムの本社があるスイス・ツーク州の裁判所に提起されました。原告を支援するNGO「スイス教会援助（HEKS/EPER）」によると、スイスの裁判所が巨大企業に対する気候関連の民事訴訟を受理するのは、これが初めての事例です。

HEKSが委託し、米国の気候変動説明責任研究所が実施した調査によれば、ホルシムは1950年から2021年の間に70億トン以上のCO2を排出しました。これは、同期間の世界の全産業排出量の約0.42%に相当します。支援団体は、ホルシムがスイスに拠点を置く最大の「カーボン・メジャー（巨大炭素排出企業）」であるため、訴訟の対象に選んだと説明しています。

両者の主張

ホルシム側は、裁判所の決定を認めつつも、控訴する意向を明らかにしました。同社は声明で、2050年までにネットゼロ排出を達成することを約束しており、科学的根拠に基づく道筋をたどっていると主張。また、「2015年以降、事業からの直接的なCO2排出量を50%以上削減した」と述べています。

一方、原告側は以下の3点を要求しています。

• 気候関連の損害に対する補償
• パリ島の洪水対策への資金的貢献
• ホルシムのCO2排出量の大幅かつ迅速な削減

世界セメント・コンクリート協会によると、セメント生産は世界のCO2排出量の約7%を占めており、産業界全体の脱炭素化が急務となっています。