米最高裁、トランプ大統領のシカゴ州兵派遣を却下 - 連邦と州の権限めぐり対立

これまでトランプ政権の政策をほぼ追認してきた米連邦最高裁判所が、今回は「待った」をかけました。ロイター通信によると、最高裁は23日、ドナルド・トランプ大統領が計画していたシカゴ地域への州兵派遣を認めない判断を下しました。この動きは、大統領が国内問題に軍を介入させる政策を拡大する中で、連邦政府と民主党主導の自治体との間の緊張を高めています。

対立する「現実」：抗議活動か、暴動か

今回の法的対立の根底には、シカゴ周辺での移民政策に対する抗議活動をめぐる、全く異なる二つの見方があります。トランプ政権は、民主党が市長を務める都市を「無法地帯」と描き、連邦施設と職員を守るために軍隊が必要だと主張しています。これに対し、イリノイ州やシカゴ市の当局者は、こうした主張は現状を偽って伝えるものであり、大統領の権力乱用だと反論。地元警察で対応可能な、小規模で大部分は平和的な抗議活動であると述べています。

実際に下級審では、政権側の主張は退けられてきました。シカゴ連邦地裁のエイプリル・ペリー判事は10月9日に派遣を一時差し止める命令を出し、「抗議と暴動を同一視し、政府を監視・批判する市民と、妨害や暴行を行う者との間の大きな違いを理解していない」と政権側の認識を批判しました。

法律の解釈が焦点に

トランプ大統領が派遣の根拠とするのは、反乱の鎮圧や侵略の撃退、または「正規軍では合衆国の法律を執行できない」場合に州兵を動員できる法律です。イリノイ州側は、政権がイリノイ州州兵300人を連邦の指揮下に置いたこと、さらにテキサス州の州兵を州内に派遣しようとしたことは違法だと訴えています。ペリー判事は、「正規軍」とは歴史的に陸軍や海軍などの現役軍人を指し、政権は州兵を動員する前に正規軍に頼ろうとした形跡がない、と指摘しています。