ガザ地区の結婚式が悲劇に：イスラエル軍の砲撃で8人死亡、新郎は血染めのスーツを脱げず

白いドレスと黒い煙。パレスチナ・ガザ地区でささやかな結婚式を挙げた一組のカップルの幸せは、イスラエル軍の砲撃によって数時間で悪夢に変わりました。結婚式の直後、隣接する避難所が攻撃され、8人が死亡。新郎は今も、甥の血で染まったウェディングスーツを脱ぐことができずにいます。

祝福が悲鳴に変わった夜

ムスタファ・アル・ボルシュさん（29）とネスマさん（22）は2023年10月以来、戦争のために結婚式を何度も延期せざるを得ませんでした。ようやく先週金曜日（12月19日）、ガザ市東部のトゥファ地区にあるテントで、40人ほどの親族に見守られ、ささやかな式を挙げました。「夢見ていた結婚式とは言えませんが、この過酷な状況下で、私たちは幸せな瞬間を掴もうとしたのです」とネスマさんは語ります。

しかし、その祝宴が終わる頃、悲劇が起こりました。式場のテントの隣にあった建物、つまりガザ教育省管轄の職業訓練施設で、戦時中は避難所として使われていた場所が、イスラエル軍の砲撃を受けたのです。そこは、夫婦が新生活を始めるはずの場所でした。瞬く間に炎と煙が立ち上り、周辺は悲鳴と粉塵に包まれました。

花婿から救助者へ

「すぐに花嫁の手を取り、親族の女性たちと避難させました。それからスーツの上着を脱ぎ、他の男たちと建物の中の生存者を救助するために駆け込みました」とムスタファさんはアルジャジーラに語りました。砲弾は建物の2階を直撃し、彼の家族や他の避難者がいた教室、そして新婚生活のために準備したすべてのものが燃えてしまいました。

救急車の到着にはイスラエル側の許可が必要で、2時間以上待たされたといいます。この攻撃で親族や隣人ら8人が死亡。ムスタファさんが救出した8歳の甥、モハマドくんも2日後に息を引き取りました。「あの日から、私はこのウェディングスーツを着たままです」と彼は語り、白いシャツについた血痕を指しました。「これは甥の血です」。

失われた帰る場所

夫婦は再びすべてを失いました。2023年12月にはジャバリアにあった実家が爆撃され、兄を一人失い、新居として準備していたアパートも破壊されました。さらに2025年3月にはもう一人の兄も亡くしています。今回の砲撃は、10月10日に発効した停戦合意期間中に起きました。合意にもかかわらず、ここ数カ月で400人以上のパレスチナ人が死亡するなどの違反が報告されています。

すべてを失った新郎新婦は、再び別々のテントで家族と暮らすことを余儀なくされています。「私の喜びは打ち砕かれました。もう生きる気力もありません」とネスマさんは悲痛な表情で語りました。「ここでは幸せのためのスペースは、一歩たりともないのです」。