iPhoneとAndroidが「同じビデオ通話」できる日
GSMA が RCS Universal Profile 4.0 を正式発表。iPhone と Android 間でネイティブなビデオ通話が可能になる「MIVC」機能とは何か、日本市場への影響とともに解説します。
あなたのスマートフォンに入っているアプリを数えてみてください。LINE、FaceTime、Zoom、Google Meet——友人に電話をかけるだけなのに、なぜこれほど多くのアプリが必要なのでしょうか。
その「当たり前」が、静かに変わろうとしています。
RCS 4.0 が目指す「壁のない通話」
2026年3月、国際移動体通信業界の標準化団体である GSMA(GSM Association)は、RCS Universal Profile 4.0 の最終仕様を正式に発表しました。この新規格の目玉が、MIVC(Messaging-Initiated Video Calls)と呼ばれる機能です。
MIVC は名前のとおり、メッセージのやり取りの延長として、そのままビデオ通話に移行できる仕組みです。1対1のチャットでも、グループチャットでも対応しており、通話が始まった後から参加できる「途中参加」機能や、チャット履歴の中に通話ログが統合される機能も含まれています。GSMA は「会話の連続性を保ちながら、グループメンバーが進行中のビデオ通話にいつでも参加できる」と説明しています。
ここで重要なのは、RCS が特定のアプリではなく、通信キャリアレベルで動作する「メッセージング規格」である点です。Apple は2024年に iPhone の標準メッセージアプリで RCS をサポートし始めました。つまり、将来的には専用アプリをインストールすることなく、iPhone と Android のユーザーが同じ画面でビデオ通話できる可能性があります。
「いつか」が来るまでの現実
ただし、ここには重要な留保があります。実現にはまだ時間がかかります。
RCS 4.0 はあくまで「標準仕様」の確定であり、各スマートフォンメーカーや通信キャリアがこの仕様を実装して初めて、ユーザーの手元に届きます。Apple が RCS に対応するまでに長い時間を要したように、MIVC の普及にも同様の時間軸が想定されます。
日本市場に目を向けると、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク の主要3キャリアはすでに RCS ベースのサービス「+メッセージ(プラスメッセージ)」を提供しています。しかし、その利用率は LINE の圧倒的な普及率の前に限定的です。日本の月間アクティブユーザー数は 9,600万人を超える LINE が、事実上の「国民的メッセージアプリ」として機能している現状があります。
日本社会にとっての意味
では、なぜ今この規格が重要なのでしょうか。
第一に、高齢化社会との接点があります。日本の高齢者にとって、「どのアプリを使えばいいか分からない」という問題は深刻です。スマートフォンに最初から入っているメッセージアプリで、孫とビデオ通話ができるようになれば、デジタルデバイドの解消につながる可能性があります。
第二に、ビジネスコミュニケーションの変化です。在宅勤務の定着により、ビデオ会議ツールの乱立が「ツール疲れ」を生んでいます。キャリアレベルで統合されたビデオ通話が実現すれば、中小企業や個人事業主にとって、コスト削減と利便性向上の両方が期待できます。
第三の視点は、LINE や Zoom といった既存プレイヤーへの影響です。RCS がビデオ通話まで標準化すれば、これらのサービスは差別化の根拠を問い直される局面を迎えます。一方で、LINE はすでに決済、ニュース、行政サービスとの連携など、単なるメッセージアプリを超えた生態系を構築しており、通話機能だけで競争が決まるわけではありません。
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