TikTok買収で新興SNS「UpScrolled」が急成長、検閲への反発が生む新潮流
TikTok買収決定後、検閲なしを謳うUpScrolledのユーザーが急増。パレスチナ系創業者が語る「オルタナティブSNS」の可能性と課題とは?
15万人。これが、TikTokの米国事業買収発表からわずか数日でUpScrolledに流入したユーザー数です。サーバーがダウンするほどの勢いで成長する新興SNSの背景には、既存プラットフォームへの深刻な不信があります。
TikTok買収が引き金となった大移動
先週、Oracle、Silver Lake、MGXの3社がTikTok米国事業の50%を取得する買収案が発表されました。この発表直後から、「#TikTokCensorship」というハッシュタグが他のプラットフォームでトレンド入りし、ユーザーたちはTikTokがパレスチナ関連コンテンツや移民問題に関する投稿を抑制していると主張し始めました。
UpScrolledの創業者であるパレスチナ系オーストラリア人のイッサム・ヒジャジ氏は、「買収契約が締結されて以降、プロパレスチナのユーザーが警告を受けたり、コンテンツの拡散が抑制されたりするケースが激増している」と説明します。昨年7月にローンチされた同プラットフォームは、「検閲なし」「シャドウバンなし」を掲げ、Apple App Storeの無料アプリランキングでトップ10入りを果たしました。
「大手テック企業の共犯になりたくなかった」
ヒジャジ氏がUpScrolledを立ち上げた動機は個人的な体験にあります。大手テック企業で働いていた彼は、2023年10月のハマス攻撃後のイスラエル軍事行動で家族を失いました。「もう共犯者でいたくなかった。役に立つことをしたかった」と振り返ります。
UpScrolledのコンテンツモデレーション方針は既存プラットフォームと一線を画します。「薬物販売など違法行為は削除するが、パレスチナについて語ることは自由だ。他のプラットフォームのように特定のグループや人々を選択的に検閲することはない」とヒジャジ氏は強調します。
日本市場への示唆
UpScrolledの急成長は、日本のソーシャルメディア環境にも重要な示唆を与えます。日本ではLINEやTwitter(現X)が主流ですが、コンテンツモデレーションの透明性や公平性への関心が高まっています。特に、政治的・社会的議題に関する投稿の取り扱いについて、ユーザーからの疑問の声が増加傾向にあります。
日本企業にとっても、この動向は無視できません。ソニーや任天堂などのエンターテインメント企業は、グローバルなソーシャルメディア戦略の見直しを迫られる可能性があります。また、NTTドコモやソフトバンクなどの通信事業者は、新興プラットフォームとの連携機会を模索することになるかもしれません。
オルタナティブSNSの課題
一方で、UpScrolledのような新興プラットフォームが直面する課題も明らかです。多くの代替SNSが失敗してきた歴史があり、ヒジャジ氏自身も「正直なところ、成功の答えは分からない」と認めています。
同氏は意図的に中毒性のあるアルゴリズムを避けていると説明します。「ユーザーをスクロールに依存させるアルゴリズムを設計するのは簡単だが、特に若い世代への精神的影響を考えると、そうしたくない」。この姿勢は、短期的な成長よりも長期的な健全性を重視する日本的な価値観と共鳴する部分があります。
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