マクロン大統領が欧州に「世界の大国」への脱皮を要求
フランス大統領が中国・ロシア・米国の脅威に対抗するため、欧州統合債券発行と防衛力強化を提案。日本にとって意味するものは?
欧州は本当に「世界の大国」になれるのだろうか?フランスのエマニュエル・マクロン大統領が欧州各紙に語った言葉は、この根本的な問いを突きつけている。
危機感が生んだ「覚醒の呼びかけ」
マクロン大統領は今週のEU首脳会議を前に、欧州が直面する現実を率直に語った。「今日、欧州は無秩序な世界で巨大な挑戦に直面している」。中国、ロシア、そして今や米国からの脅威が高まる中、欧州は「覚醒の呼びかけ」に応えなければならないという。
彼の提案は具体的だ。欧州全体で1.2兆ユーロ(約180兆円)の年間投資を可能にする「欧州債券」の発行。安全保障・防衛、クリーンエネルギー、人工知能といった重要分野への大規模投資である。
「世界の金融市場は米ドルを恐れるようになっている。代替手段を求めている」とマクロン大統領は指摘する。一方に権威主義的な中国があり、もう一方には法の支配から遠ざかる米国がある現状で、欧州の4億5000万人という規模は大きな魅力だというのだ。
「保護」か「保護主義」か
興味深いのは、マクロン大統領の微妙な表現だ。「中国も米国も産業を保護している。欧州は世界で最も開放的な市場だ」と述べながらも、「保護主義になるべきだとは言わない。一貫性の問題だ」と付け加えている。
これは欧州が直面するジレンマを如実に表している。自由貿易の理念を維持しながら、どうやって戦略的産業を守るのか。日本企業にとっても馴染み深い課題である。
トランプ大統領のグリーンランド併合発言についても、マクロン大統領は警告を発した。「危機の終わりに『ほっ』と安堵する臆病な傾向がある。脅迫があって、突然ワシントンが譲歩する。そして人々はそれで終わりだと思う。一秒たりともそんなことを信じてはいけない」。
日本から見た欧州の「大国化」
欧州の統合深化は、日本にとって何を意味するのだろうか。トヨタ、ソニー、任天堂といった日本企業にとって、欧州は重要な市場であり生産拠点でもある。欧州が単一の経済・政治主体として行動するようになれば、日本企業の戦略も大きく変わる可能性がある。
特に注目すべきは、マクロン大統領が「民主的法治国家は投資家にとって大きな魅力」と述べた点だ。これは日本の価値観と合致する。中国の権威主義と米国の「法の支配からの離脱」の間で、日本と欧州は共通の立場に立つ可能性がある。
一方で、欧州統合債券への懐疑論も根強い。ドイツをはじめとする北欧諸国は、フランスが自国の改革不足を欧州全体に負担させようとしていると見ている。マクロン大統領自身も「フランスは北欧のような責任感に基づいた均衡モデルを持ったことがない」と認めている。
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