目で命令し、ドローンが動く——米軍の次世代AR兵士
アンデュリルとMetaが共同開発する軍用ARグラスは、視線追跡と音声でドローン攻撃を指示できる。1590億円規模のプロジェクトが描く「人間を武器システムとして最適化する」未来とは。
兵士が目を動かすだけで、数キロ先のドローンが攻撃目標へ向かう——これは近未来のSFではなく、2028年の実戦配備を目指して進行中のプロジェクトです。
「人間を武器システムとして最適化する」
米国の防衛テクノロジー企業アンデュリルは2025年、Metaとの共同開発による軍用拡張現実(AR)グラスの詳細を公開しました。プロジェクトを率いる副社長のクエイ・バーネット氏は、陸軍特殊作戦司令部出身のベテランです。彼が掲げるビジョンは明快かつ挑発的です——「人間を武器システムとして最適化すること」。
具体的にどういうことか。兵士がARグラスをかけると、視野にコンパスや周辺地図、近くを飛行するドローンの位置情報、AIによる目標認識結果(例:「あれはトラックです」)がリアルタイムで重ね合わされます。そこから先は音声で操作できます。「負傷者を退避させろ」「あの区域を避けてルートを組め」——兵士が平易な言葉で話しかけると、大規模言語モデル(LLM)がその意図を解釈し、ソフトウェアコマンドへと変換します。現在、GoogleのGemini、MetaのLlama、AnthropicのClaudeが候補として試験中です。
さらに将来的には、音声すら不要になる可能性があります。視線の動きと微細なタップ操作だけで、ドローンに偵察を命じ、「砲兵部隊らしき物体を発見したら戻れ」と指示し、戻ってきた映像をもとにシステムが「近くのドローンで攻撃」という選択肢を提示する——この一連の流れを、通常の指揮系統の承認を経ながら実行できる設計です。
このプロジェクトには2つの柱があります。ひとつは陸軍が発注した「兵士搭載型任務指揮(SBMC)」で、アンデュリルは昨年1億5900万ドル(約230億円)のプロトタイプ契約を獲得しました。もうひとつは同社が自己資金で開発する「EagleEye」という独自ヘルメット&ヘッドセット一体型システムで、軍からの要請なしに「これを使いたいと思わせる」ことを目指しています。陸軍が選ばなければ、同盟国軍への販売も視野に入れています。
すべてを統合するのはアンデュリルのソフトウェア「Lattice」です。陸軍は今年3月、200億ドル(約3兆円)をかけてLatticeを陸軍インフラ全体に統合すると発表しました。
なぜ今、このニュースが重要なのか
背景を理解するには、前任者の失敗を知る必要があります。もともとこのプロジェクトを主導していたのはMicrosoftでした。同社は220億ドル(約3兆2000億円)の量産契約を受ける予定でしたが、ペンタゴンの監査でARグラスが適切にテストされていなかったことが判明し、契約は最終的にキャンセルされました。マイクロソフトの失敗という前例があるからこそ、アンデュリルの挑戦は業界全体から注目されています。
競合も激しい。同じタイミングで、ウェアラブルセンサー専門企業のRivetが1億9500万ドル、イスラエルの防衛テクノロジー企業Elbitが1億2000万ドルのプロトタイプ契約をそれぞれ獲得しており、複数の企業が同じ市場を狙っています。
タイミングとして見逃せない点がもうひとつあります。Metaとアンデュリルの関係は、実は複雑な歴史を持ちます。2017年、当時FacebookだったMetaは、アンデュリル創業者のパルマー・ラッキー氏を、トランプ前大統領への支持をめぐる社内対立を経て追放しました。その二人が今、トランプ政権下で再び同じARビジネスに取り組んでいるのです。政治と産業と技術が交差する構図は、単純な技術ニュースとして読み解くには不十分です。
「情報過多」という最大の敵
技術的な実現可能性とは別に、より根本的な問いがあります。これは本当に兵士の役に立つのか、という問いです。
元米海兵隊員で現在はシンクタンクRANDで陸軍の技術調達を研究するジョナサン・ウォン氏は、懐疑的です。「小隊指揮官だったとき、私は3チャンネル同時に動くラジオを持っていました。2人が同時に別チャンネルで話しかけてきた瞬間、どちらの言葉も理解できなくなり、自分の周囲への注意も失われた」と彼は語ります。「人間が一度に受け取れる情報量には限界があります」。
ARグラスが節約する注意力より、操作に必要な注意力の方が大きければ、兵士はそれを拒絶します。戦場という極限状態で、新しいUIを習得し、視線を意識的に動かし、音声コマンドを発する——その認知的コストは、平時のユーザーテストでは測りきれません。ウォン氏は「実際に役立つかどうかを知るには、何年もの野外テストが必要になるだろう」と指摘します。
ハードウェア面でも課題は山積みです。砂塵、爆発、煙が飛び交う戦場での耐久性。すでに45キログラム以上の装備を身につける兵士にとっての重量増加。5G回線のない環境でのローカルAI処理能力。そして連邦の軍事調達規制により、Metaの民生品とは異なる中国企業に依存しない新たなサプライチェーンの構築——部品の調達は今年3月にようやく始まったばかりです。
日本の視点から見ると、このプロジェクトは防衛産業だけの問題ではありません。ソニーのマイクロディスプレイ技術や京セラのセラミック素材、村田製作所のセンサー部品は、こうした軍民両用デバイスの部品として国際的に需要が高い分野です。日本政府が防衛費をGDP比2%へ引き上げる方針を固めた現在、国内の防衛テクノロジー企業や部品メーカーがこのエコシステムにどう関わるかは、産業政策上の重要な問いになりつつあります。
本コンテンツはAIが原文記事を基に要約・分析したものです。正確性に努めていますが、誤りがある可能性があります。原文の確認をお勧めします。
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