トランプ氏、フェンタニルを「大量破壊兵器」に指定 ― 米中関係に潜む新たな火種

PRISM Insight

今回の決定は、公衆衛生問題であったオピオイド危機を「国家安全保障の脅威」へと再定義する、重要な政策転換を示唆しています。フェンタニルを「大量破壊兵器」と位置づけることで、米政府は今後、従来の麻薬対策の枠を超え、拡散に関与する国家や組織に対して、テロ対策や兵器拡散防止に用いられるような強力な制裁措置を発動する理論的根拠を得たことになります。これは、米国の対中政策における新たな「圧力カード」となり、外交交渉の力学を大きく変える可能性を秘めています。

ドナルド・トランプ米大統領は月曜日、強力な合成オピオイドであるフェンタニルを「大量破壊兵器（WMD）」に指定する大統領令に署名しました。専門家らは、この動きが直ちに米中関係を揺るがす可能性は低いものの、米政府の対中政策の選択肢を広げ、長期的な関係に不確実性をもたらす可能性があると分析しています。

トランプ大統領はこの薬物を「麻薬というより化学兵器に近い」と述べ、その危険性を強調しました。ホワイトハウスが発表した大統領令は特定の国名を挙げていませんが、その背景には、米国がフェンタニルおよびその原料の主要供給源と見なしている中国への牽制があると広く解釈されています。

アナリストらによると、この措置が短期的に米中間の外交問題に発展する可能性は低いと見られています。しかし、今回の指定は、ワシントンがこれまで主に公衆衛生の文脈で議論してきたフェンタニル問題を、安全保障の領域に引き上げることを意味します。

これにより、米政府は将来的に、フェンタニルの密売をWMDの拡散とみなし、関連する個人や団体、さらには国家に対してより厳しい制裁を科す道を開いたことになります。専門家らは、この新たな政策ツールが、今後の米中間の交渉において予測不可能な変数として作用する可能性があると指摘しています。