幽霊が見える弁護士と、揺れ動く心――『ファントム・ロイヤー』が描くもの
SBSドラマ『ファントム・ロイヤー』でユ・ヨンソクとイソムの距離が縮まる。韓国法廷ドラマの新潮流と、キャラクター関係の深化が示すK-ドラマの魅力を読み解く。
幽霊が見える弁護士と、エリート女性弁護士。この二人の距離が縮まるとき、視聴者は何を感じるのだろうか。
SBSの話題作『ファントム・ロイヤー』(原題:유령 변호사)は、単なる法廷ドラマではない。霊が見える能力を持つ弁護士・シン・イラン(ユ・ヨンソク)と、冷静沈着なエリート弁護士・ハン・ナヒョン(イソム)が、この世に未練を残した霊たちの悩みを解決していくというユニークな設定で、韓国国内外のファンを引きつけている。
「近づく二人」――ドラマが丁寧に積み上げるもの
最新の展開として報じられているのは、ハン・ナヒョンがシン・イランに対して明らかに特別な感情を抱き始めているという場面だ。イソムが演じるナヒョンは、これまで「エリート」としての立場を崩さない人物として描かれてきた。その彼女が心を開いていく過程は、視聴者にとって単なるロマンスの進展以上の意味を持つ。
『ファントム・ロイヤー』の魅力は、ホラーでも純粋なラブコメでもない、その絶妙なバランスにある。霊の「未練」というテーマを通じて、生きている人間が抱える後悔や執着を映し出し、そこに二人の弁護士が人間として成長していく姿が重なる。ユ・ヨンソクは2012年のデビュー以来、『応答せよ1994』『ドクター異邦人』など多くの話題作に出演してきた実力派。イソムもまた、映画『ベテラン』や『怪しい彼女』など、幅広いジャンルで存在感を示してきた。この二人のケミストリー(相性)が、作品の核心を支えている。
K-ドラマが「ジャンルの融合」に向かう理由
日本のドラマファンにとって興味深いのは、『ファントム・ロイヤー』が体現する「ジャンル融合」のトレンドだ。法廷もの×オカルト×ロマンスという組み合わせは、一見すると無理があるように思える。しかし、NetflixやDisney+などのグローバルプラットフォームが普及した現在、K-ドラマは「一つのジャンルに収まらない作品」を積極的に生み出している。
この背景には、グローバル視聴者の多様な好みに応えるという戦略がある。日本でも、U-NEXTやHulu、Netflixを通じてK-ドラマを視聴する人口は着実に増加しており、特に20〜40代の女性を中心に根強い支持がある。法廷ドラマというジャンルは、日本でも『リーガル・ハイ』や『SUITS』など人気作品が多く、馴染みやすい入口となっている。
さらに注目すべきは、K-ドラマにおける「感情の積み上げ方」だ。日本のドラマが比較的早い段階で関係性を進展させる傾向があるのに対し、韓国ドラマは視聴者をじらしながら、一つひとつの表情や仕草で感情の変化を丁寧に描く。この「焦らし」の文化は、日本のファンにも深く刺さる要素であり、SNS上での考察や感想の共有を活発にさせる原動力にもなっている。
関係者たちの視点
制作側から見れば、ユ・ヨンソクとイソムという二人のキャスティングは計算されたものだろう。どちらも「アイドル出身ではない実力派俳優」として知られており、演技の安定感がドラマの世界観を支えている。視聴者からは「二人のシーンになると空気が変わる」という声も多い。
一方、グローバルファンの視点では、このドラマが「韓国の法制度や霊魂観」を自然な形で伝えている点も見逃せない。韓国には「한(ハン)」と呼ばれる、晴らせない恨みや悲しみの概念があり、霊が未練を残して現世に留まるという設定はその文化的土壌と深く結びついている。日本にも「怨霊」や「成仏」という概念があり、このテーマは日本の視聴者にとっても違和感なく受け入れられやすい。
記者
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