スポーツ界から政界へ：共和党、2026年中間選挙にタバービル氏らアスリート候補を多数擁立

フットボールの英雄は、選挙でも勝てるのか？アメリカ合衆国上院での5年間の任期を経て、共和党のトミー・タバービル議員がアラバマ州知事選への出馬を表明した。彼の選挙ウェブサイトが「タバービル・コーチを知事に」というバナーを掲げていることは、2026年の中間選挙が近づく中、共和党がいかに地元のスポーツ英雄を頼りにしているかを象徴している。この傾向は、ドナルド・トランプ元大統領の時代に加速したもので、政治経験のない「アウトサイダー」が有権者にアピールする新たな戦略となりつつある。

「タバービル流」勝利の方程式

アスリート出身の政治家は新しい現象ではない。しかし、ワシントンの既存政治家に対する根深い不信感が広がる現在、両党は既成概念にとらわれない候補者を求めており、アスリートはその型に当てはまる存在として注目されている。特に共和党は、この戦略を積極的に活用している。ジョージア州では元テネシー大学ヘッドコーチのデレク・ドゥーリー氏が、民主党のジョン・オソフ上院議員の議席を狙う。他にも、元NFLキッカーのジェイ・フィーリー氏がアリゾナ州で、元MLBスターのマーク・テシェイラ氏がテキサス州で、それぞれ連邦議会下院議員選挙に出馬している。

この流れは、かつてプロフットボールチームを所有し、在任中も多くのアスリートを支持してきたトランプ氏の影響が大きい。同氏はタバービル氏の上院選を支持し、2022年には元ジョージア大学のスター選手だったハーシェル・ウォーカー氏を上院選で推薦した。

カレッジフットボール文化が根付く南東部の新潮流

この傾向は、カレッジフットボール文化が絶大な人気を誇る米国南東部、通称「SEC回廊」で特に顕著だ。2020年に政界経験ゼロから上院議員に当選したタバービル氏の成功は、多くのフットボール関係者に影響を与えている。「同窓会に行き、握手をし、プログラムを売り込み、有望な選手を勧誘し、その親と話す。これは政治と何ら変わらない」とタバービル氏はインタビューで語った。実際にドゥーリー氏ら複数の候補者が、出馬前にタバービル氏に助言を求めたという。

党派を超えた戦略と有権者の視線

一方、民主党も元NFL選手のコリン・オルレッド氏や、元プロ総合格闘家のシャリス・デイビッズ下院議員など、アスリート出身者を擁立している。しかし、ベテラン民主党戦略家のジェームズ・カービル氏は「民主党は元軍人やCIA関係者をリクルートする傾向がある」と指摘する。ワシントン政治への不満が高まるにつれ、両党が多様な経歴を持つ候補者を探す動きは加速しそうだ。

しかし、有権者がこの動きを全面的に歓迎しているわけではない。2024年後半のAP通信とNORCの世論調査によると、アスリートが政治問題について発言することを支持する成人は26%に留まり、36%が明確に不支持を表明した。カービル氏が言うように、「アスリートとして有名なうちは誰もが好きでいてくれる。だが政治家として口を開いた途端、半分の人間はあなたを嫌いになる」のが現実かもしれない。