ByteDanceの動画AI「Seedance 2.0」が映画業界を震撼させる理由
中国ByteDanceの動画生成AI「Seedance 2.0」が映画業界に波紋。ディズニーやNetflixが著作権侵害で警告書を送付。日本のコンテンツ産業への影響は?
2月、中国のByteDanceが発表した動画生成AI「Seedance 2.0」に、ハリウッドの大手映画スタジオが一斉に反発している。ディズニー、Netflix、パラマウントが相次いで著作権侵害の警告書を送付したのだ。
「監督のように考える」AI
Seedance 2.0の能力は、中国のAI業界関係者を驚愕させた。世界的ヒットゲーム『黒神話:悟空』を開発したGame Scienceの創設者馮驥氏は「深く衝撃を受けた」と述べ、中国の著作権規制やコンテンツ審査システムに大きな課題をもたらすと警告した。
1500万人のフォロワーを持つ中国の映像制作スタジオを率いる潘天宏氏は、「これまでのどの動画生成モデルよりも格段に優れている。監督のように考える」と評価している。
現在、Seedance 2.0へのアクセスは制限されている。ByteDanceの中国向けAIアプリ(チャットボット「豆包」など)の既存ユーザーのみが体験可能で、海外からの利用はできない。この制限により、中国国内でアカウントの転売まで発生している。
深刻な計算資源不足
Seedance 2.0は技術的な優位性を誇る一方で、深刻な問題に直面している。計算資源の不足により、1本の動画生成に数時間の待機時間が発生しているのだ。
筆者が実際に試したところ、90,985番目の待機順位で、5秒の動画生成に約4時間を要すると表示された。2時間待機後、さらに6時間の追加待機が必要と通知され、結局諦めることになった。
月額70ドルを超える有料プランに加入しても、長時間の待機は避けられない。ユーザーは深夜の利用や短時間動画の生成、プレミアムアカウントのレンタルなど、様々な回避策を模索している。
中国とハリウッドの対照的な反応
興味深いのは、中国のエンターテインメント業界の反応だ。カンヌ映画祭受賞監督の賈樟柯氏は、Seedance 2.0を使った5分間の作品を公開し、「技術が映画を置き換えるかどうかは心配していない。重要なのは人がその技術をどう使うかだ」とコメントした。
中国では春節聯歓晩会(春節ガラ)の背景映像にもSeedance 2.0が使用され、政府の承認を得た形での活用が進んでいる。これは、AIに対して慎重な姿勢を保つハリウッドとは対照的だ。
著作権保護の格差が生む問題
中国では知的財産保護がアメリカほど発達しておらず、AI企業を訴えることが困難だ。この法的現実が、知的財産侵害の常態化を招いている。潘天宏氏は、Seedance 2.0が自分の声を模倣できることに驚きながらも、「利用規約のどこかで同意したのだろう」と受け入れている。
しかし、グローバル展開時にはこれが重大な法的責任となる。実際、ウルヴァリンとハルクの戦闘シーンや、トム・クルーズとブラッド・ピットの対決映像がSNSで拡散され、さらにはマイケル・ジャクソンとヒトラーのダンス対決という不適切なコンテンツまで生成されている。
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