中韓、停滞していたFTA交渉を再開へ サービス分野が新たな焦点に
中国と韓国が12月12日、停滞していたFTA第2段階交渉の加速で合意。製造業からサービス分野へと経済協力の軸足を移し、地政学的変化に対応する狙いです。
地政学的な変化が後押し、経済協力の新たな章へ
中国と韓国が、長らく停滞していた自由貿易協定(FTA)交渉を再開し、両国間の経済関係を再構築する動きを本格化させています。地政学的な変動がアジア地域の同盟関係を塗り替える中、両国は従来の製造業中心の関係から、より付加価値の高いサービス分野へと協力を拡大することを目指しています。
この動きは、2025年12月12日に行われた中国の王文濤商務相と韓国の金正寬産業通商資源相との会談で、FTA第2段階交渉を加速させることで合意したことを受けたものです。
「製造業からサービス業へ」協力の軸足を転換
両国間のFTAは2015年に第1段階が発効し、主に製品の関税撤廃・削減に焦点が当てられてきました。しかし、その後、文化、観光、金融、医療といったサービス分野や投資に関する第2段階交渉は、米中対立の激化や新型コロナウイルスの影響などを受け、実質的に中断していました。
今回の交渉再開は、両国が新たな協力の道を模索していることを示しています。中国にとっては、巨大な国内サービス市場への外国からの投資を呼び込むと同時に、地域内での経済的な結びつきを強化する狙いがあります。一方、製造業の成長が鈍化する韓国にとっては、中国のサービス市場へのアクセスを確保し、新たな成長エンジンを見出すことが急務となっています。
背景:複雑化する東アジアの力学
今回の中韓の接近は、米国主導のインド太平洋戦略に対抗し、地域経済の主導権を確保したい中国と、最大の貿易相手国である中国との関係を安定させつつ、安全保障上の同盟国である米国とのバランスを取る必要がある韓国、双方の戦略的な思惑が一致した結果と見られます。東アジアのサプライチェーンや技術覇権を巡る競争が激化する中で、両国の経済協力の行方は、日本を含む地域全体の安定と繁栄に大きな影響を与える可能性があります。
今後の課題と展望
交渉が加速するとはいえ、前途は平坦ではありません。特に、コンテンツや金融といったサービス分野の市場開放には、各国内の規制や既得権益が障壁となる可能性があります。また、データ移転や知的財産権の保護といったデリケートな問題も横たわっています。
両国がこれらの課題を乗り越え、実質的な合意に至れるかどうかが、今後の東アジアの経済秩序を占う上で重要な試金石となりそうです。
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