AIブームの次章:2026年、巨額投資の先に見える「効率化」という新戦場
フェイスブック元幹部クリス・ケリー氏が、AI業界の次なる焦点は「効率化」だと予測。2025年に610億ドルを超えたデータセンター投資の過熱と電力問題を受け、2026年以降はコスト削減技術を持つ企業が勝者になると分析します。
フェイスブック(現メタ)の元最高プライバシー責任者であるクリス・ケリー氏は、CNBCの番組で、人工知能(AI)ブームの次の段階は「効率化」に焦点が移るとの見解を示しました。現在はAIの計算能力を支えるインフラ構築競争が過熱していますが、2026年以降はその流れが変わる可能性が高いと指摘しています。
610億ドルの狂騒曲:データセンター建設ラッシュの光と影
S&Pグローバルによると、2025年だけでデータセンター市場のインフラ関連取引額は610億ドル(約9兆円)を突破し、世界的な建設ラッシュの様相を呈しています。特にOpenAIは、GPU大手のNVIDIAやインフラ大手のオラクル、Coreweaveとの提携を含め、今後数年間で1.4兆ドル(約210兆円)以上ものAI関連投資を計画していると報じられています。
しかし、この熱狂の裏で電力供給への懸念が深刻化しています。例えば、NVIDIAとOpenAIが9月に発表したプロジェクトでは、少なくとも10ギガワットの電力を消費するデータセンターが含まれています。これは米国の一般家庭約800万世帯の年間消費量に匹敵し、ニューヨーク市が2024年の夏に記録したピーク需要とほぼ同規模です。
「人間の脳は20ワットで動く」—コストが勝者を決める
ケリー氏は「人間の脳は20ワットで動く。思考するのにギガワット級の電力センターは必要ない」と語り、AI業界が電力効率の改善を迫られると予測します。彼によれば、データセンターのコストを劇的に下げるブレークスルーを達成した企業こそが、最終的なAI競争の覇者となるでしょう。
この流れを裏付けるように、2024年12月にはDeepSeek社が、開発費用を600万ドル未満に抑えたと主張する無料のオープンソース大規模言語モデルを発表し、米国の競合他社に衝撃を与えました。コスト効率を追求する動きはすでに始まっているのです。
AI投資の焦点は、NVIDIAのような半導体メーカーから、データセンターの電力管理、冷却技術、AIモデルの圧縮・最適化ソフトウェアを提供する企業へと拡大する可能性があります。巨額のインフラ投資の裏側で、その「効率化」を担う縁の下の力持ち企業に新たな投資機会が生まれるでしょう。
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