韓国、2034年までに「再利用ロケット」開発へ。総額2.3兆ウォンの国家プロジェクトを承認
韓国政府が、総額2.3兆ウォンを投じて2034年までにメタンエンジンを搭載した再利用型ロケットを開発するプロジェクトを承認。2032年の月着陸船ミッションを支援し、低コストの宇宙輸送時代を目指します。
リード:国家宇宙戦略の新たな一歩
韓国政府が、2034年までの完成を目指す再利用型宇宙ロケット開発プロジェクトを正式に承認したことが、韓国宇宙航空庁(KASA)によって明らかにされました。このプロジェクトは、韓国の長期的な宇宙探査ロードマップの核心をなすもので、総事業費は2.3兆ウォン(約16億米ドル)に上ります。経済財政部傘下の政府資金評価委員会が承認したこの計画は、韓国が自立した宇宙輸送能力を確保するための重要な一歩となります。
技術的特徴:メタンエンジンへの転換
本プロジェクトの技術的な核心は、1段目と2段目の両方に使用可能な、推力80トンのメタンエンジンを単一で開発する点にあります。KASAによると、これは当初1段目と2段目で異なるエンジンを開発するとしていた計画からの大きな方針転換です。メタンエンジンは、従来の燃料に比べて煤(すす)の発生が少なく、再利用に適しているという利点があります。
技術背景:なぜメタンエンジンなのか?メタンは、既存のロケット燃料であるケロシンよりもクリーンに燃焼するため、エンジン内部の損傷や汚れが少なく、繰り返し使用する再利用ロケットに最適な燃料とされています。また、火星などでも理論上は生成可能であるため、将来の深宇宙探査を見据えた選択でもあります。
具体的なロードマップ
KASAが示した計画は段階的に進められます。まず2031年末にエンジンの地上燃焼試験を実施し、翌2032年には、再利用ロケットの垂直離着陸技術を検証する「ホッピングテスト」を行う予定です。ホッピングテストとは、ロケットの試作機が低高度で垂直に離陸し、再び垂直に着陸する試験を指します。
この新型ロケットは、再利用技術が完成する前の2032年に、まず使い捨て型として月着陸船の打ち上げミッションに使用される計画です。そして最終的に、完全な再利用型ロケットシステムの完成は2034年を目指しています。
未来への展望
KASAのユン・ヨンビン長官は、「今回の承認は、技術主導の成長を目指す政府の野心を実現する助けとなるでしょう」と述べました。さらに、「国産の月着陸船の打ち上げと共に、このプロジェクトは低コストで再利用可能な宇宙輸送機の新時代を切り開くことになるでしょう」と期待を表明しました。
PRISM Insight: 韓国の今回の決定は、スペースXが切り開いた「再利用ロケット」という潮流に、国家として本格的に参入する意思表示です。メタンエンジンという次世代技術を選択したことは、単なる追随ではなく、将来の商業宇宙市場における競争力確保を狙った戦略的な判断と言えます。これは、世界的な宇宙開発競争が、国家の威信だけでなく、経済性と持続可能性を重視する「ニュースペース時代」へ完全に移行したことを象徴しています。
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