コンゴ東部、和平合意は崩壊か?M23のウビラ掌握で7000人死亡の紛争が再燃
カタールと米国仲介の和平合意にもかかわらず、コンゴ民主共和国東部でM23反乱軍が攻勢を再開。戦略都市ウビラを掌握し、地域紛争への懸念が再燃している現状を分析します。
先月、カタールの仲介でM23反乱軍とコンゴ民主共和国(DRC)政府との間で和平合意が結ばれた際、多くの国民は恒久的な停戦への希望を抱きました。しかし、M23が今月に入り新たな攻撃を開始し、戦略的都市ウビラを一時的に掌握したことで、その希望は打ち砕かれました。この紛争は今年だけで少なくとも7,000人の命を奪い、100万人近くが避難民となっています。
崩壊した和平への期待
ロイター通信によると、2025年12月15日、M23とコンゴ政府軍の衝突後、ウビラ市には平穏が戻りつつあります。しかし、11月にドーハで和平合意が署名された直後の今回の攻撃は、和平プロセスへの信頼を大きく損ないました。コンゴの弁護士で政治アナリストのユベール・マソメラ氏は、アルジャジーラに対し次のように語っています。
彼らがこの紛争を終わらせる意志がないことは明らかです。多くの死者と破壊が出ているにもかかわらず、和平合意の履行と停戦遵守は遅々として進んでいません。ここの人々は、自分たちの悲しい運命に見捨てられたと感じています。
— ユベール・マソメラ氏(政治アナリスト)
戦略的要衝ウビラと地域紛争の影
米国の圧力により「信頼醸成措置」としてM23が撤退したウビラは、南キブ州の主要な交通・経済の拠点です。この都市はルワンダとの国境に位置し、ブルンジの首都ブジュンブラからわずか30キロの距離にあります。専門家は、M23がウビラを掌握したことで、支配地域が大幅に拡大し、鉱物資源が豊富なカタンガ地方への入り口を確保し、ブルンジの目の前にルワンダの代理勢力が位置することになると指摘しています。これにより、紛争が地域全体に拡大する懸念が深まっています。
紛争の歴史的背景: DRC東部の紛争は、1994年のルワンダ大虐殺に端を発します。ツチ族と穏健派フツ族の虐殺から逃れた数百万人がDRC東部に流入し、第一次・第二次コンゴ戦争(1996-2003年)へと繋がりました。M23は、この戦争で戦ったツチ族民兵の系譜を汲んでおり、2012年にコンゴ軍内での不当な扱いに抗議して反乱を起こしました。
米国主導の和平交渉は機能するか?
アフリカ諸国による数々の和平努力が失敗に終わる中、カタールと米国が仲介に乗り出しました。ドーハでの交渉はDRCとM23の直接対話に、ワシントンでの交渉はDRCとルワンダ政府間の対話に焦点を当てています。12月4日には、トランプ大統領の立ち会いのもと、ルワンダのカガメ大統領とDRCのチセケディ大統領が、武装勢力への支援停止を義務付ける合意に署名しました。
しかし、一部の専門家は、合意に両国からのレアアース採掘権を米国に保証する条項が含まれていることから、米国の動機に懐疑的な見方を示しています。署名からわずか1週間後のウビラでの出来事は、この和平プロセスの脆弱性を露呈しました。コンゴ政府によると、この攻撃で少なくとも400人が死亡し、200人が負傷したとされています。
コンゴ東部の紛争は、民族間の対立という側面だけでなく、豊富な鉱物資源をめぐる代理戦争の様相を呈しています。ルワンダの関与疑惑や米国のレアアースへの関心は、地域の不安定が外部の経済的・戦略的利益によっていかに増幅されるかを示しています。真の紛争解決よりも地政学的利害が優先される限り、この地域に恒久的な平和が訪れるのは難しいでしょう。
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