イスラエル、外国メディア規制法を延長 国軍ラジオの閉鎖も決定し報道の自由へ懸念広がる
イスラエル国会が、政府による外国メディアの閉鎖を認める法律を延長。さらに内閣は国軍ラジオの閉鎖も承認し、国内外から報道の自由への懸念が強まっています。
イスラエル国会は、国家安全保障に脅威を与えるとみなされた外国メディアの国内での活動を政府が禁止できる法律を延長しました。さらに同日、内閣はイスラエル国防軍(IDF)が運営する公共ラジオ局の閉鎖計画も承認し、国内外から報道の自由に対する深刻な懸念が表明されています。
「アルジャジーラ法」の適用範囲が拡大
ロイター通信によると、今回賛成22、反対10で可決された法案は、ガザでの戦争を機に導入された時限的な権限を、平時を含め今後2年間延長するものです。これにより、政府は裁判所の命令なしに外国報道機関の事業停止を命じることが可能になります。
この法律は「アルジャジーラ法」とも呼ばれ、2024年5月にカタール資本のニュース専門局「アルジャジーラ」の事務所閉鎖と放送停止に使われました。イスラエル政府は、アルジャジーラが反イスラエル的な偏向報道を行い、ハマスを支持していると非難。一方、アルジャジーラ側はこれを「犯罪行為」であり報道の自由への攻撃だと強く反発しています。
国内の「国軍ラジオ」も閉鎖へ
外国メディア規制法の延長が可決される数時間前、イスラエル内閣は、国が資金を提供しイスラエル国防軍(IDF)が運営する「軍ラジオ(ガレイ・ツァハル)」の閉鎖計画を承認しました。編集権は独立していましたが、イスラエル・カッツ国防相が提案した計画に基づき、2026年3月1日までに放送を停止する予定です。
カッツ国防相は、同局が「もはや兵士のための代弁者としての役割を果たしておらず、IDFの価値観に沿わない政治的で分裂を招くコンテンツを放送している」と閉鎖の理由を説明しました。また、ベンヤミン・ネタニヤフ首相も「軍の管轄下で放送局が運営されるのは極めて異例だ。北朝鮮などごく一部の国にしか存在せず、我々がその一員に数えられたくはないだろう」と述べ、決定を後押ししました。
相次ぐ決定に「民主主義への打撃」と強い反発
これらの動きに対し、イスラエルのジャーナリスト組合は最高裁判所に提訴する意向を示し、「表現の自由と報道の自由に対する深刻かつ違法な侵害だ」と非難。シンクタンクのイスラエル民主主義研究所(IDI)も、軍ラジオの閉鎖は「イスラエルの独立した公共ラジオニュース放送の半分を事実上消し去るものだ」と指摘。「公共メディア機関の閉鎖は、孤立した動きではない。イスラエルの民主主義を継続的に損なう、より広範で憂慮すべきパターンの一部だ」と警鐘を鳴らしています。
外国メディア(アルジャジーラ)と国内の公共メディア(軍ラジオ)に対する規制強化が、ほぼ同時に進められている点が重要です。それぞれ理由は異なりますが、政府の公式見解と異なる声を抑え込み、情報環境をコントロールしようとする意図が透けて見えます。これは、長期化する紛争下でイスラエル社会の言論の自由と民主主義が重大な岐路に立たされていることを示唆しています。
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