欧州天然ガス、3年半ぶり安値。暖冬と「LNGシフト」がもたらすインフレ鎮静効果
欧州の天然ガス価格が、暖冬と潤沢な在庫を背景に2021年6月以来の安値水準に下落。インフレ緩和への期待が高まる一方、価格変動リスクは依然として残ります。市場の現状と今後の見通しを解説。
欧州の天然ガス価格が、2021年6月以来となる約3年半ぶりの安値水準に下落しました。記録的な暖冬による暖房需要の減少と、潤沢な在庫が主な要因です。エネルギー価格の安定は、インフレ圧力の緩和につながるとして市場から注目されています。
価格下落の3つの背景
ロイター通信によると、欧州の天然ガス指標であるオランダTTF先物(期近物)は、一時5%近く下落し、1メガワット時あたり€30.60前後で取引されました。この価格下落には、主に3つの要因が重なっています。
1. 記録的な暖冬
欧州全域で例年にない暖かい冬が続いており、暖房需要が大幅に減少。ガスの消費が抑制されています。
2. 歴史的に高い在庫水準
冬の半ばを過ぎたにもかかわらず、欧州のガス貯蔵施設の在庫水準は平均で約83%と、過去の平均を大きく上回っています。これにより、供給不安が後退しました。
3. LNG輸入の安定化
かつて依存していたロシアからのパイプライン供給停止後、欧州は液化天然ガス(LNG)の輸入体制を強化。現在、安定したLNGの流入が価格の安定に寄与しています。
市場の見方と今後のリスク
現在の価格は、2022年に1メガワット時あたり€300を超えたエネルギー危機当時とは様変わりです。エネルギーコストの低下は、家計や企業の負担を軽減し、欧州全体のインフレ抑制にプラスに働くと見られています。
しかし、一部のアナリストは楽観論を警戒しています。予期せぬ寒波の到来や、LNGの供給網に混乱が生じた場合、価格が再び急騰するリスクは依然として残っているとの指摘です。ある商品ストラテジストは、「市場は以前より均衡しているが、極端な価格変動の時代が終わったわけではない」とコメントしています。
欧州はロシア産ガスへの依存から脱却し、LNGを主軸とする新たなエネルギー供給網に適応したようです。これは、供給危機管理から価格変動リスクの管理へと、欧州エネルギー市場の課題が移行したことを示唆しています。今後は、長期的なインフラ投資と需要管理の巧拙が、安定性を左右する鍵となりそうです。
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