韓国軍、北朝鮮の越境対応で「境界線」の定義を更新 偶発的衝突の防止目指す
韓国軍は、北朝鮮軍による軍事境界線(MDL)の侵犯が相次ぐ中、偶発的な衝突を避けるため、境界線の定義に関する内部指針を更新した。この変更は、対応の柔軟性を高める一方、消極的対応への懸念も生んでいる。
韓国軍は、北朝鮮兵士による軍事境界線(MDL)の侵犯が相次いでいることを受け、偶発的な軍事衝突のリスクを低減するため、陸上境界線の定義に関する内部指針を更新したことが、12月22日、軍関係者の話で明らかになりました。この措置は、最前線部隊の対応に柔軟性を持たせることを目的としていますが、一部からは北朝鮮への対応が消極的になるのではないかとの懸念も出ています。
韓国軍合同参謀本部(JCS)によると、今回の更新は、現場の部隊が越境の判断を下す際に、既存の韓国軍用地図上のMDLだけでなく、国連軍司令部(UNC)が設定したMDL標識を結ぶ線を「総合的に」考慮するよう指示するものです。これにより、事実上、韓国軍は状況に応じてより南側を基準線として用いることが可能になり、北朝鮮兵士が標識線を越えても、韓国軍の地図上で越境と判断されなければ、直ちに対応しないケースも想定されます。
#### 背景:なぜ指針の更新が必要だったのか? 2023年末に金正恩総書記が南北関係を「敵対的な二国間関係」と規定して以降、北朝鮮は2024年4月からMDL付近に部隊を派遣し、地雷の埋設や対戦車障壁の設置、鉄条網の補強といった建設活動を活発化させています。JCSによれば、この過程で北朝鮮兵士によるMDL侵犯は2024年以降26回発生し、今年(2025年)だけで17回報告されています。韓国軍はこれに対し、警告放送を約2400回、警告射撃を36回実施し、いずれのケースでも北朝鮮兵士は撤退しました。
軍関係者によれば、この新しい指針はすでに2024年6月に最前線部隊に共有され、今年9月に作戦指針として正式に盛り込まれました。JCSは、この決定が「部隊の断固たる対応を保証しつつ、偶発的な衝突を防ぐため」のものだと説明しています。国防部関係者も「日中、北朝鮮兵士がMDL付近で活動するような限定的な状況に適用されるもので、作戦手順を変更したり、北朝鮮に有利な形でMDLを適用したりする意図はない」と強調しました。
しかし、この動きに対しては、韓国政府が北朝鮮との対話再開を目指す中で、軍が北朝鮮の越境行為に消極的に対応する口実になりかねないとの批判も上がっています。
また、韓国軍の地図とUNCのデータセットでMDLの座標が一致しないという技術的な問題も存在します。国防部関係者によると、座標の約60%に差異があり、来年(2026年)にUNCとこの問題の解決に向けて協議する計画です。韓国国防部は先月、MDLを明確化するための軍事会談を平壌に提案しましたが、北朝鮮側からの返答はまだありません。
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