サバ州選挙:地方ナショナリズムの波がアンワル政権を揺るがす
2025年11月29日に行われたマレーシア・サバ州議会選挙で、アンワル首相率いる与党連合が大敗。地域政党が躍進し、連邦政府への不満と自治権拡大を求める「サバ・ナショナリズム」が鮮明になった。
マレーシア東部サバ州でアンワル首相に実施された州議会選挙は、連邦政府に対する地方の不満が噴出する結果となりました。アンワル・イブラヒム首相率いる与党連合希望連盟(PH)が議席を大幅に減らす一方、サバ州を拠点とする地域政党が躍進。「サバ州はサバ州の人のために」というスローガンが、有権者の心を掴んだことを示しています。
連邦政党の退潮と地域政党の二強対決
選挙結果によると、全サバ国民連合(GRS)議席のうち、アンワル政権と緩やかに連携する地域政党連合サバが29議席を獲得し、第一党の座を維持しました。僅差で続いたのが、多民族からなる野党ワリサン党で、25議席を確保しました。ワリサンは「サバはサバ人のために」という地域主義を前面に掲げています。
最大の衝撃は、アンワル首相の与党連合希望連盟(PH)の惨敗です。今回20議席に候補者を立てましたが、獲得したのはわずか1議席。選挙前の8議席から激減しました。特に、伝統的に華人コミュニティの支持を受けてきた民主行動党(DAP)は、保有していた6議席すべてを失うという壊滅的な結果に終わりました。
専門家分析:「反マレー半島」票がサバ・ナショナリズムを後押し
タスマニア大学のマレーシア政治専門家、ジェームズ・チン氏は、この結果を「西マレーシア(マレー半島)に対する反対票であり、サバ・ナショナリズムの表れだ」と分析します。同氏によれば、サバ州の有権者は、自分たちの政治的な未来を自分たちで決定したいと望んでおり、クアラルンプールからの干渉をこれ以上望んでいないということです。
分離独立運動のリスクと連邦政府の課題
チン氏は、今後の連邦政府の対応が重要だと指摘します。争点の一つは、サバ州内で徴収された歳入の40%を州政府に返還するよう命じた裁判所の判決です。連邦政府は1974年以降この支払いを履行しておらず、サバ州民の大きな不満となっています。「もしクアラルンプールが強硬な姿勢を続け、サバ州に返還すべきものを返さないのであれば、本格的な分離独立運動に発展する可能性がある」とチン氏は警告します。
今回の選挙結果は、アンワル首相に対し、サバ州とサラワク州を単なる州としてではなく、対等なパートナーとして扱うべきだという明確なメッセージを送ったと言えます。連邦政府がこの声にどう応えるかが、マレーシアの未来を大きく左右することになりそうです。
アンワル政権がサバ州の自治権要求と歳入返還を尊重すれば連邦関係は安定しますが、これを無視すれば地域の不満が爆発し、国家の結束を揺るがしかねません。今回の選挙は、連邦と地方の新たな力関係を模索する出発点となります。
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